2022 Fiscal Year Annual Research Report
Experimental investigation of the effects of phytoplankton diversity on ecosystem functioning in the ocean
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19K15895
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
遠藤 寿 京都大学, 化学研究所, 准教授 (80795055)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海洋生態 / 植物プランクトン / 生物多様性 / 共起ネットワーク / 生態系機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋植物プランクトンは、形態や生理機能が異なる多様な種が同一環境に共存することで、高い多様性を維持している。しかし、この多種共存が生態系に対しどのような意味を持つのかについては知見が乏しい。本研究は、植物プランクトンの多種共存が群集の多機能性と生産力に与える効果を定量化し、多様性の生態学的意義を明らかにすることを目的とする。過去の観測で得られた群集データをもとに合理的な疑似群集を設計し、培養実験によって人為的に多様性を創出することでその定量化を試みる。並行して、船舶を用いた外洋調査を推進し、現場観測から実際の多様性とその制御機構を明らかにする。 2022年度は、これまでに実施した共培養実験の結果をまとめ、さらにRNA-seqを用いた遺伝子発現解析を実施した。本課題におけるこれまでの培養実験では、他の植物プランクト種の共存下で特定の珪藻の増殖速度および炭素固定効率が増加することを確認した。本年度の分析により、他種共存下において、遺伝子転写レベルでは硝酸塩や珪酸塩、鉄取り込みに関わる遺伝子の発現量が減少し、光合成や炭素固定関連の遺伝子の発現量増加が観察された。同結果を2022年度日本微生物生態学会で報告し、現在、原著論文を執筆中である。 また、日本南岸を流れる黒潮域において採取した46測点のDNAメタバーコーディングデータを解析し、同海域で優占するハプト藻類の多様性と共存機構を見積もった。その結果、ハプト藻類の多様性が地理起源の推定に役立ち、また同系統は進化的に近縁な種同士がより共存しやすい傾向があることが明らかとなった。同成果を原著論文としてまとめ、国際学術誌Molecular Ecologyより発表した。
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Research Products
(4 results)