2019 Fiscal Year Research-status Report
大規模遺伝情報・医療保険情報解析によるイヌの近交弱勢に関わる遺伝子の解明
Project/Area Number |
19K15968
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Research Institution | Anicom Specialty Medical Institute Inc |
Principal Investigator |
松本 悠貴 アニコム先進医療研究所株式会社(研究開発課), 研究開発課, 研究員 (40831384)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゲノム / イヌ / 近親交配 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アニコム損害保険株式会社が独自にもつ2,000万件を超えるイヌの医療情報データ、ゲノム全域を対象にした遺伝子解析、および疾患に関する遺伝子機能予測モデルを用いて、近交弱勢に特に影響する遺伝的変異を明らかにすることを目的としている。 本年度では、保険契約個体を対象に、ゲノム全域の一塩基多型(SNP)のデータの収集と、その保険情報の整理を行った。まず、保険契約者のデータベースから、10年以上継続して契約している個体を選抜した。本研究では、解析により多くの個体の情報が必要であることから、飼育頭数が多く、かつ犬種特異的な疾患を持つ、トイプードルとミニチュアダックスフントの2犬種を対象とした。選抜した契約個体から口腔内組織を採取し、DNAの抽出を行った後、約23万SNPの遺伝子型を効率的に決定する、SNPアレイを実施した。また、サンプリングされた個体を対象に、疾患項目や発症時の年齢等のデータの整理を行った。これらのデータ整理により、次年度以降の研究遂行のための準備が整った。また、ここまでの一連の研究成果は、国内及び国際学会で発表を行った。 本年度ではさらに、より詳細な配列情報解析のための準備も行なった。ゲノム全域のSNP解析の結果、どの領域の遺伝子が影響しうるかが明らかになった場合には、その領域のどの遺伝子変異が実際に影響しうるかを調べる必要がある。そのためには、詳細なゲノム配列情報が必要になるが、これまでに、これら2犬種のゲノム配列は解読されていないため、これら2犬種、各2個体を対象に、Illumina社の次世代シーケンサーであるNovaSeq 6000を使用し、全ゲノムの配列データを収集した。 次年度では、SNPデータを用いた解析の実施及び全ゲノムデータの配列情報の整理を行うとともに、遺伝子機能予測モデルを適用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度では、主に遺伝子配列データの収集及び医療情報のデータの整理を行った。まず、保険契約個体を対象に、ゲノム全域の一塩基多型(SNP)のデータの収集を行った。保険契約者のデータベースから、10年以上継続して契約している個体を選抜した。本研究では、解析により多くの個体の情報が必要であることから、飼育頭数が多く、犬種特異的な疾患を持つ、トイプードルとミニチュアダックスフントの2犬種を対象とした。選抜した契約者に口腔内組織を採取するためのスワブキットを送付し、サンプリングをしていただいた後、サンプルを郵送してもらい、それらのサンプルからDNAの抽出を行った。現在までに、両犬種で300個体ずつのサンプリングに成功した。これらの個体は、Illumian社のSNPアレイを行い、23万SNPの遺伝子型を効率的に決定した。また、これらのサンプリングが終了した個体を対象に、疾患情報、その疾患の発症時の年齢やその傾向を明らかにするためのデータの整理を行った。 さらに、解析の結果、どの領域の遺伝子が影響しうるかが明らかになった場合には、その領域のどの遺伝子変異が実際に影響しうるかを調べる必要がある。そのためには、詳細なゲノム配列情報が必要になるが、これまでに、これら2犬種のゲノム配列は知られていない。そのため、これら2犬種、各2個体を対象に、Illumina社の次世代シーケンサーであるNovaSeq 6000を使用し、全ゲノムの解読を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、得られたデータの解析を中心に行う予定である。主に3つの解析を予定している。一つ目が、SNPデータを用いた全ゲノム関連解析である。これまでのデータ整理及び予備解析の結果から、皮膚疾患に関して候補となるSNPが検出されているが、今後、より多くの疾患を対象に網羅的に解析を行うことで、近交弱勢に影響しうる遺伝領域を明らかにする。 二つ目の解析は、全ゲノム配列の解読である。前年度に得られたゲノム配列の生のシーケンスデータを用いて、マッピング及びアライメントを行う。本研究では、既存のゲノム配列であるCanFam3.1をはじめとした3犬種の参照配列を対象に解析を行い、トイプードル及びミニチュアダックスフントの両犬種で見られる変異を、詳細かつ網羅的に明らかにする予定である。 三つ目の解析として、表現型予測モデルを用いて、表現型に影響しうる変異を明らかにする。上記2つの解析の結果、候補領域の絞り込み及び当該領域での変異情報が明らかにできる。当該領域の塩基配列を、保険契約者から得られた疾患群と対照群のゲノムDNAを用いて解析する予定である。 また、上記で得られた研究成果は、9月の動物学分野の学会で発表することで、獣医学及び畜産分野における研究者に向けて発信するとともに、詳細な議論を通じて、研究内容のブラッシュアップを図る予定である。
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Causes of Carryover |
初年度ではサンプルの採取がやや遅れ気味であったことから、予定していたSNPアレイの実施が一部遅延していた。次年度に入り、サンプルの採取は概ね完了したため、SNPアレイの試薬代等を繰り越して使用し、次年度で解析を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)