2020 Fiscal Year Research-status Report
過剰なMgイオンによるミトコンドリアのエネルギー代謝異常とがん悪性化
Project/Area Number |
19K16125
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋爪 脩 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (50755692)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 活性酸素種 / マグネシウム / ミトコンドリア / ATP / NADH / 酸素消費 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内に2番目に多く存在するMg2+の量は厳密に制御されており、その恒常性の破綻の影響はよくわかっていなかった。これまでの研究から細胞内で過剰にMg2+を蓄積させるとROSレベルが増加することを明らかにした。本年度はCNNM4をノックダウンしたHEK293細胞株を用いて細胞内での過剰なマグネシウムの蓄積がどのようにROSレベルの増加を引き起こすのか検証を行った。 ミトコンドリアでのROSレベルの上昇や、ATPレベルの上昇、Mg2+がATP合成酵素でのATP産生に必須であることから、Mg2+が増加することでミトコンドリアのATP合成酵素が過剰に活性化し、それによる膜電位低下を補償するために呼吸鎖での電子伝達が増加し、電子の漏出が増えることでROSとなっていることが予測された。そこでATP合成酵素の阻害剤であるOligomycin AのROS抑制効果を検証した。Oligomycin Aは過剰量処理すると電子伝達を阻害しROSの産生を引き起こすことが知られているため、コントロール細胞では効果が見られない低濃度で処理したところ、CNNMノックダウン細胞でのROSレベルはコントロール細胞と同程度まで抑制された。 次にミトコンドリアの電子伝達量の指標である酸素消費量を調べたところ、CNNM4ノックダウン細胞で有意な酸素消費の増加が認められた。さらにミトコンドリア電子伝達系への主な電子供与体であるNADH量についても調べたところ、CNNM4ノックダウンにより細胞内のNADH量の低下と、NADH消費速度の上昇が明らかになった。これらの結果からCNNM4ノックダウン細胞ではミトコンドリアでの電子伝達が増加していることが示唆された。 これらの実験結果から過剰なMg2+がミトコンドリアでのATP産生を活性化し、それに伴って呼吸鎖での電子伝達の増加させることがROSの原因であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養細胞株を用いて、過剰なMg2+蓄積によるROS産生の増加のメカニズムを明らかにすることができており、概ね当初の計画通りに研究を進めることができている。そのため、来年度のノックアウトマウスを用いた解析においても計画通りに実験を行うことが期待できる。このため概ね順調に進展していると自己評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに線虫や複数のヒト培養細胞株で過剰なMg2+の蓄積がROSレベルの上昇を引き起こすことが確認できているので、CNNM4のノックアウトマウスを用いて哺乳類の生体レベルで過剰なMg2+によるROSの影響を調べる。CNNM4は腸で発現が大きいことが知られているため、腸上皮細胞でのROSレベルや酸化ダメージ、またROSレベル上昇による影響を重点的に検証する予定である。また、ROSの影響が確認できた場合、抗酸化剤により抑制できるかどうかも検証を行う。
|
Causes of Carryover |
研究室にある試薬、物品を最大限利用することで今年度の執行額を大きく節約することができた。研究計画に変更はなく、前年度の研究費は新たな抗体や試薬の購入に利用し、当初の予定通りの計画を進めていく。
|
Research Products
(3 results)