2021 Fiscal Year Research-status Report
過剰なMgイオンによるミトコンドリアのエネルギー代謝異常とがん悪性化
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19K16125
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋爪 脩 大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (50755692)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マグネシウム / CNNM / ROS / 腸上皮細胞 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに線虫や哺乳類培養細胞を用いた解析から、細胞内での過剰なマグネシウムイオンの蓄積がミトコンドリアでの過剰なROS産生を引き起こすことが明らかになってきた。そこで、本年度はモデルマウスを用いて、細胞内のマグネシウム過剰蓄積のマウス生体内での影響の解明に取り組んだ。 腸で強く発現するCNNM4を腸特異的にノックアウトしたマウスを解析に用いた。このマウスではCNNM4が欠損することにより腸管腔から取り込んだマグネシウムイオンが腸上皮細胞内に蓄積してしまう。大腸組織を解析したところ、腸上皮細胞でのROSレベルの上昇と、酸化ストレスマーカーである8-oxo-dG陽性細胞の割合の増加が明らかになった。さらに腸上皮細胞で細胞増殖マーカーki67陽性細胞の割合も増加していることもわかった。このマウスに抗酸化剤N-acetylcysteineを自由飲水で投与したところ、酸化ストレスマーカー陽性細胞と増殖マーカー陽性細胞の割合の増加は抑制された。 これらの結果から、マウス生体内においても細胞内で過剰にマグネシウムイオンが蓄積すると、過剰なROS産生が引き起こされることが明らかになった。また、これまでの研究成果と合わせて考えると、この現象は生物種や細胞種を超えて共通に引き起こされることも示唆された。 さらに、マウス腸上皮細胞ではマグネシウムイオンの過剰蓄積により細胞増殖の亢進が明らかになった。CNNM4腸特異的ノックアウトマウスはAPCのヘテロ欠損により野生型より大きな腸ポリープを作ることを明らかにしている。今回のROSを介した細胞増殖の亢進はこの腫瘍増殖の一因かもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通り、順調に研究を勧められている。モデルマウスを持ちた生体内での細胞内マグネシウムイオンの過剰蓄積を明らかにできており、さらに細胞増殖の亢進という変化も明らかにできているため、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内での過剰なマグネシウムイオンの蓄積の影響を明らかにできたが、どのようにミトコンドリアでのATP産生を介したROS産生を引き起こすのか、そのメカニズムはまだよくわかっていない。そこで、ミトコンドリアへのマグネシウムイオン取り込みチャネルの抑制などを行い、ROS産生などを調べることで、ミトコンドリア内でのマグネシウムイオンの増加がどのように関わっているか明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
モデルマウスを用いた解析が順調に行えた結果、マウスの飼育費用や試薬類を節約することができた。また、研究室にすでにある試薬や物品を利用することもできたので、研究費を節約することができた。次年度は細胞内でのマグネシウムイオンの過剰蓄積によるミトコンドリアからの過剰なROS産生のメカニズムを明らかにするために、ミトコンドリアへのマグネシウム取り込みに関わるMrs2に着目し、抑制した場合などの変化を明らかにする。未使用額はこの解析に充てることにしたい。
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Research Products
(2 results)