2020 Fiscal Year Research-status Report
プロスタノイド受容体サブタイプの転換と大腸がん発生・悪性化メカニズムの解明
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19K16374
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
福島 圭穣 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (10805112)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロスタノイド / EP受容体 / 薬理学 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プロスタグランジンE2(PGE2)が引き起こす大腸がんについて、各E型プロスタノイド(EP)受容体サブタイプの役割の解析を目指すものである。令和2年度は、ヒト後期結腸がんモデル細胞であるDLD-1細胞をPGE2で刺激し、時系列を追ったトランスクリプトーム解析を行うことで、PGE2刺激後の各時間における遺伝子応答をそれぞれ網羅的に同定した。これらの解析結果を、昨年度に行ったヒト初期大腸がんモデルHCA-7細胞の応答因子と統合することで、初期大腸がんと後期大腸がんにおけるEP受容体刺激時の遺伝子応答を比較した。次に、実際のヒト大腸がん組織におけるEP受容体サブタイプの役割を調べるため、昨年度に引き続き、がんゲノムビックデータベースより取得した一次情報の解析を進めた。大腸がん患者組織の遺伝子発現情報に対し、各EP受容体サブタイプの発現量でクラスタリングを行うことで、いずれかのEP受容体サブタイプのみを特異的に高発現する大腸がんクラスターを見出した。また各クラスターは、互いに異なる種類のEP受容体サブタイプの発現量がほとんど増加していないことも明らかとなった。以上のモデル細胞および大腸がん組織の遺伝子発現情報を比較することで、初期大腸がん細胞およびEP4受容体高発現大腸がんクラスターの両方において、脂質代謝や糖代謝などの細胞内代謝系が変化している可能性が見いだされた。そこで実際にHCA-7細胞の各代謝経路の活性評価を行い、初期大腸がん細胞はPGE2刺激によってグルコース取り込み量や乳酸放出量、ペントースリン酸経路の活性が変化することを明らかとした。以上の研究結果は、日本薬学会第141年会にて発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度および昨年度の研究によって、PGE2で刺激した初期ヒト大腸がんHCA-7細胞および後期ヒト大腸がんDLD-1細胞の遺伝子応答が網羅的に明らかとなった。これらの結果を統合することで、初期および後期大腸がんのEP受容体刺激に対する遺伝子応答の違いを明確に比較することが可能となった。また本年度は、昨年度に引き続きがんゲノム・ビッグデータの一次情報の解析を進めることで、実際の大腸がん組織より、いずれかのEP受容体サブタイプのみを特異的に高発現する大腸がんクラスターを同定した。これらのクラスターは、互いに異なる種類のEP受容体サブタイプはほとんど発現していないことも明らかとなった。以上の様に、これまでの研究により得られた解析結果を利用し、初期および後期モデル細胞と、各EP受容体を高発現する実際の大腸がんクラスターの遺伝子発現情報を連携させることで、初期および後期大腸がんにおける各EP受容体の役割解明を効率よく遂行できるものと考えている。また、本解析の成果として本年度は、ヒト初期大腸がん細胞の細胞内代謝系がPGE2刺激によって変化する可能性を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、PGE2で刺激した際のヒト初期および後期大腸がんモデル細胞の遺伝子応答を網羅的に明らかにしている。令和3年度以降は、引き続きモデル細胞を用い、大腸がん初期および後期におけるEP受容体サブタイプの役割とその具体的な下流因子を明らかにしていく。また、がんゲノム・ビッグデータより見出した、各EP受容体サブタイプを高発現する大腸がんクラスターの遺伝子発現情報の解析を進め、実際の大腸がん組織における各EP受容体サブタイプの役割解明も引き続き進めていく。以上の解析により、実際の大腸がんでも誘導される可能性の高いEP受容体下流因子を同定し、初期および後期大腸がんモデル細胞においてその役割と制御機構を明らかにしていく。また、これまでに初期大腸がん細胞において、EP4受容体下流のがん発生因子として補体抑制因子を見出している。さらに初期大腸がん細胞は、PGE2刺激によって代謝系の活性が変化することも明らかとしている。これらの具体的な制御因子についても、次年度以降引き続き明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
令和2年度に購入した消耗品および学会参加費の一部の支払いが令和3年度4月に行われたため。
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Research Products
(11 results)