2019 Fiscal Year Research-status Report
海洋生物資源からの新規AGEs阻害物質の探索と応用
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19K16398
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
栗本 慎一郎 昭和薬科大学, 薬学部, 特任助教 (70735018)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 海洋生物 / AGEs / 生活習慣病 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質の糖化により生じる終末糖化産物(AGEs)は、糖尿病合併症、アルツハイマー型認知症、非アルコール性脂肪肝炎などの様々な疾病の病態形成に関与することが報告されており、AGEs阻害作用はこれらの疾病の予防・治療に有効な新たな作用として期待されている。海綿動物や渦鞭毛藻などの海洋生物からは多様な化学構造をもつ生物活性天然物が単離されているが、AGEs阻害作用に着目した探索研究は十分に行われておらず、既存のものとは異なるタイプのAGEs阻害物質の発見が期待できる。このような背景のもと、海洋生物を素材としてAGEsが病態形成に関与する疾病の予防・治療に応用可能な新規AGEs阻害物質を獲得することを目的に研究を行なった。 本年度は、沖縄産Suberea属海綿から2個の新規ブロモチロシンアルカロイドMa'edamine CおよびDを単離、構造決定し、論文発表を行なった。Ma'edamine CおよびDはそれぞれ、これまでに天然から報告のないN-alkyl-3,5-diethyl-2-propylpyridiniumおよびN-alkyl-3,5-diethyl-4-propylpyridiniumを構造中にもつ新規ブロモチロシンアルカロイドであった。この他に3種の沖縄産海綿から4個の新規化合物を単離しており、現在、立体化学の解析とAGEs阻害活性試験実施に向けた準備を進めている。 また、神奈川県および沖縄県にて採取した渦鞭毛藻の大量培養を行ない、成分探索に必要な抽出物の調製を行なった。これらの抽出物について次年度、活性のスクリーニングと成分探索を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海綿動物より6個の新規化合物を単離、構造決定し、うち2個の化合物については論文発表することができたため。渦鞭毛藻については、大量培養により成分探索に必要な抽出物を調製することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も海綿動物からの新規化合物の探索を継続して行なう。昨年度に単離した新規化合物については、立体化学の解析、AGEs阻害活性の評価を実施する。渦鞭毛藻については調製した抽出物について活性のスクリーニングを行ない、成分探索を開始する。顕著な活性を示す化合物が得られた場合には、類縁化合物の探索、誘導体の調製を優先して進める。
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Causes of Carryover |
消耗品費については、単離した化合物の生物活性試験の実施に至らなかったため使用額に差が生じた。また新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた学会、研究材料の採集などの出張が中止となり旅費について使用額に差が生じた。 差額は海洋生物からの化合物の単離、活性試験、誘導体調製の実施に必要な消耗品費、研究材料の採集と研究成果発表のための旅費などに充当し、円滑に研究を遂行する。
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