2019 Fiscal Year Research-status Report
ドラッグ・リポジショニングを目指した医療系データベースとオミックス情報の統合解析
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19K16461
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
横山 聡 近畿大学, 薬学部, 講師 (70615913)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドラッグ・リポジショニング / 有害事象自発報告データベース / レセプトデータベース / 不均衡分析 / 抗がん作用 / 強心配糖体 / トランスクリプトームデータベース / パスウェイ解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
新薬の開発には10年以上という長い期間と数百億円ともいわれる資金が必要であるにもかかわらず,成功率は極めて低く,特に近年は新薬の創出が困難になっている。このような背景の中,ドラッグ・リポジショニングが注目されている。本研究では,有害事象自発報告データベースやレセプトデータベースといった医療データベースやバイオインフォマティクス関連データベースの統合解析を行うことで,ドラッグ・リポジショニング候補薬剤の戦略的なスクリーニング法の基盤構築を目的とする。新たなドラッグ・リポジショニング研究手法の基盤構築は,新薬開発のパラダイムシフトを引き起こし,例えば,スムーズなリバーストランスレーショナルリサーチへの橋渡し,さらには,レトロスペクティブ研究や観察研究などのトランスレーショナルリサーチへとつなげることが可能となる。そこで,本研究ではまず米国の有害事象自発報告データベースと日本のレセプトデータベースを用いて強心配糖体であるジゴキシンと悪性腫瘍との関連性にフォーカスを当てデータマイニングを実施したところ,それらの間にinverse associationが存在することを発見した。ジゴキシンがどのような遺伝子の発現を変動させ,どのようなパスウェイに影響を及ぼしているのかを調査するため,トランスクリプトームデータベースへアクセスし,発現変動遺伝子の特定やパスウェイエンリッチメント解析を行うことで,ジゴキシンの抗がん作用としての新規メカニズムの可能性について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に概ね沿って実行できている。特に今年度は有害事象自発報告データベースやレセプトデータベースから悪性腫瘍に対して逆シグナルを有する薬剤をスムーズにスクリーニングすることができたために,順調に進めることができたと考えている。またバイオインフォマティクスデータベースのハンドリングについても,トランスクリプトームやパスウェイ等のデータ構造の特徴を理解し,データマイニングの手法を確立しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は悪性腫瘍以外の難病や希少疾患などをもターゲットとして,これら疾患に関連するデータベースを購入して,新たなドラッグ・リポジショニング候補薬剤のスクリーニングを実施する。データマイニングがドラッグ・リポジショニング研究に有用であると考えられてはいるが,一度に全薬剤を網羅的に調査するという方法は現時点では我々の手技では不可能であり,ターゲット薬剤をある程度絞った状態でデータベースを解析していくというのが現状である。従って,解析すれば必ずドラッグ・リポジショニングに係る候補薬剤を検出できるというわけではない。一方,我々の研究手法は偶発的に未知の有害事象を検出できる可能性も有している。そこで,ドラッグ・リポジショニング研究と並行して,未知の有害事象に係る情報についても研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
大容量のデータベースを保管するためのハードディスクを購入する予定であったが,既存のハードディスクで賄うことができたため,次年度使用が生じた。次年度にデータ保管用のハードディスクを購入するための予算として充当する予定である。
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Research Products
(5 results)