2021 Fiscal Year Research-status Report
ドラッグ・リポジショニングを目指した医療系データベースとオミックス情報の統合解析
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19K16461
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
横山 聡 近畿大学, 薬学部, 講師 (70615913)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドラッグ・リポジショニング / レセプトデータベース / 有害事象自発報告データベース / トランスクリプトームデータベース / パスウェイ解析 / 副作用予防薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
新薬の開発には10年以上という長い期間と莫大な資金が必要であるにもかかわらず,成功率は極めて低く,近年は新薬の創出が困難になっている。このような背景の中,ドラッグ・リポジショニングが注目されている。本研究では,リアルワールドデータの1つであるレセプトデータベースを中心として,有害事象自発報告データベースやバイオインフォマティクス関連データベースを統合解析することでドラッグ・リポジショニング候補薬剤の戦略的なスクリーニング法の基盤構築を目的とする。2019年度は悪性腫瘍に対するドラッグ・リポジショニング研究として,リアルワールドデータとトランスクリプトームデータベースを統合解析することによってジゴキシンの抗腫瘍効果の可能性について論文で報告した。また,超高齢社会で問題となる骨粗鬆症をターゲットとして,骨粗鬆症と抗精神病薬や経口抗凝固薬との関連性について検討を行った。薬剤性の骨粗鬆症が懸念されている中で,発症リスクを低減させる医薬品の探索を行っており,2020年度にこれらの結果の一部を論文で報告した。2021年度の大きな成果としては,難治性疾患の1つである関節リウマチに対する候補薬剤の同定に成功し,論文発表を行った。現在は,アミオダロンによって誘発される甲状腺機能障害の発症予防に有用な薬剤のスクリーニングも試みており,まずは,併用薬剤数が増えることで薬物相互作用の影響を受けて甲状腺機能障害の発症リスクが増大する可能性について論文で報告した。同様に,オキサリプラチンによって誘発される末梢神経障害の発症予防あるいは治療に有用な薬剤のスクリーニングを試みており,既に末梢神経障害の発現プロファイルを明らかにして論文報告をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に概ね沿って実行できている。特に2021年度は難治性疾患である関節リウマチに対して,有害事象自発報告データベースやレセプトデータベースを用いた解析によって逆シグナルを有する薬剤,すなわち治療薬としての可能性を秘めた薬剤をスムーズにスクリーニングすることができた。さらに,バイオインフォマティクスデータベースを活用することで,スクリーニングした薬剤の分子メカニズムを検討することができた。結果として,医療データベースとバイオインフォマティクスデータベースを組み合わせたデータマイニングによる研究結果を論文発表という形につなげることができた。また,同様の手法を用いて,悪性腫瘍に対するドラッグ・リポジショニング研究を継続して行っている。さらに,現在は,医薬品によって引き起こされる副作用のプロファイルを明らかにするとともに,当該医薬品と薬物相互作用を有する医薬品の同定を試みており,既に一部は論文として報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
悪性腫瘍に関するドラッグ・リポジショニング研究については,我々の研究手法で既にジゴキシンを候補薬剤の1つとして同定しているが,さらに癌腫に特異的な候補薬剤のスクリーニングも試みている段階である。また,関節リウマチについては,治療候補薬剤としてハロペリドールの可能性について報告したが,データマイニングによって得られた情報はあくまでも仮説であり,関連性を示したに過ぎない。そこで,スクリーニングで同定された候補薬剤と疾患との因果関係を明らかにするため,代表的な薬剤疫学研究的手法であるコホート研究やケースコントロール研究により仮説の検証を進めていく。 薬物相互作用によって副作用が重篤化するケースもあれば,その逆に,副作用を軽減するようなケースが想定される。ドラッグ・リポジショニング研究として,副作用を軽減する薬剤の同定につなげるため,薬物相互作用に着目した研究も進めている。これまで甲状腺機能障害や末梢神経障害,薬剤性骨粗鬆症といった薬剤起因性の副作用のプロファイルを明らかにしており,2022年度はこれら副作用の発現予防ならびに治療につなげる候補薬剤のスクリーニングに取り組む。薬物相互作用や希少疾患を研究対象とするうえで問題となるのがサンプル数である。レセプトデータベースはビッグデータであるとはいえ,このようなサンプル数の少ないアウトカムを研究対象とすると,統計解析上,不都合を生じることがある。その解決策の一つとして,例えば,複数のレセプトデータベースを統合して解析することができれば,サンプル数の増加,ひいてはアウトカムのイベント数も増加させることが可能になると考える。異なるレセプトデータベースを統合させて解析するには,解析プログラムコードの問題など様々なハードルが出現すると考えられるが,それらをクリアして,ビッグデータの強みを活かした研究を遂行する。
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Causes of Carryover |
データボリュームが大きくなってきたため,データ保存用のsolid state drive (SSD) を購入する予定であったが,ワークステーションに接続するためのSSD接続用ボードが,世界的な半導体不足により供給不安定であったため購入できなかった。次年度に購入する予定である。
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Research Products
(13 results)