2019 Fiscal Year Research-status Report
長時間にわたって継続するオートファジーを維持する機構の解析
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19K16474
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
小笠原 裕太 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (00773524)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | オートファジー / 膜脂質 / 脂肪滴 / kennedy pathway / 隔離膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類が持つ分解系の一種オートファジーについて、生体膜の主成分であるホスファチジルコリン(PC)を合成するKennedy経路が関わる『長時間にわたって継続するオートファジーを維持する』機構を明らかにすることを目的にKennedy経路の律速酵素CTP:phosphocholine cytidylyltransferase(CCT)のアイソザイムCCTβ3に着目した解析を行った。申請者はこれまでに、マウス線維芽細胞においてCCTβ3の活性が長時間飢餓条件下におけるオートファジーの活性の維持おいて重要であることを見出していたが、今回新たに癌細胞の増殖においても重要な役割を果たす可能性を見出した。骨肉腫細胞U2OSにおいて長時間の飢餓条件下ではCCTβ3が脂肪滴へとリクルートされ、このときGFP-LC3陽性のオートファジー膜が伸長する様子がライブ観察により明らかとなった。さらにCCTβを欠損させると短時間飢餓条件下におけるオートファジー活性には影響を与えないが、長時間飢餓条件下での活性については有意に減少することを見出した。またCCTβを欠損させた腫瘍細胞の長時間飢餓時の生存率が著しく減少することも明らかとなった。これらの結果より、長時間飢餓時のオートファジーには脂肪滴上でのCCTの活性化とそれによって増加するPC合成が必要であることが示唆された。これまでにオートファジーは飢餓の時間では区別されてはいなかったが、本研究により短時間と長時間でその制御機構に差異があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞レベルでのCCTβ3とオートファジーの関与について十分に検証することができており、腫瘍細胞における生存に関与するという医学的観点からも重要な知見を得ることができた。現在成果をまとめ、論文投稿の段階にありおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞レベルでの解析によりCCTβ3が長時間飢餓条件下におけるオートファジー活性の維持に必要であることが明らかになっただけでなく、特定の腫瘍細胞の生存に大きく関与していることも見出した。この知見をもとにマウスモデルへのCCTβ3を欠損させた腫瘍細胞を移植し腫瘍形成能が野生型の細胞に比べ変化がみられるか検証し、より高次的な機能について検討していきたい。またCCTβ3だけでなくPC合成に関与する他の酵素の活性を制御することで長時間飢餓条件下におけるオートファジーの活性に変化が起きるか検証しPC合成経路とオートファジーのクロストークについてより明確に示したい。
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Causes of Carryover |
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の対応で学会がキャンセルされたことを受けその旅費が一部残ってしまったが、これについては次年度の学会参加費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)