2019 Fiscal Year Research-status Report
The elucidation of novel mechanisms for regulation of allergic inflammation by serotonin
Project/Area Number |
19K16702
|
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
木庭 乾 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (90793795)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ILC2 / セロトニン / アレルギー / 気管支喘息 / 2型免疫応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、様々な生理活性を発揮するセロトニンが、アレルギー性疾患の病態形成に重要な2型自然リンパ球(ILC2)に対する抑制作用を持つことに着目し、アレルギー性疾患の新しい抑制機構としてその解明を目指すものである。本年度はまず、セロトニンがILC2を選択的に抑制するのかを明らかにするため、獲得免疫系の主要な2型サイトカイン産生細胞であるTh2細胞に対する作用を確認した。In vitroで誘導したTh2細胞に対してセロトニンを添加した場合のサイトカイン産生を確認したところ、ILC2同様、Th2細胞のIL-5やIL-13産生が顕著に抑制された。また、アルテルナリア誘導性喘息モデルマウスにセロトニンを点鼻投与したところ、非投与群に比べてILC2とTh2細胞の両方が顕著に減少することが明らかになった。この時、細胞増殖マーカーであるKi67の発現量を確認したところ、Th2細胞に比べてILC2においてKi67陽性率が顕著に減少することが明らかになり、セロトニンはILC2とTh2細胞の両方を抑制するが、ILC2により強く作用する可能性が示唆された。続いて、肺の内在性セロトニン産生細胞を同定するため、免疫組織学染色によってセロトニンを検出したところ、アルテルナリアを投与したマウスの気管支にセロトニン強陽性細胞が多数出現することが明らかになった。肺のセロトニン産生細胞としては、肺神系内分泌細胞(PNEC)、マスト細胞、血小板などが知られている。血小板と思われるセロトニン陽性細胞は正常肺と喘息肺両方の実質域に散見されたが、気管支セロトニン陽性細胞とは発現強度や存在場所、形状が明らかに異なっていた。連続切片を用いてセロトニンとマスト細胞のマーカーであるMcpt1を染色したところ、気管支セロトニン陽性細胞のほとんどがMcpt1陰性であり、大半がマスト細胞では無いことが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ILC2と並ぶ主要な2型サイトカイン産生細胞であるTh2細胞に対するセロトニンの作用を検討し、Th2細胞がILC2同様セロトニンによって抑制されることが明らかとなった。アレルギー性炎症の抑制機構を理解し治療法開発に繋げるためには、自然免疫系と獲得免疫系の両方についての理解が重要であり、重要な知見であると考えている。興味深いことに、Ki67陽性率についてはILC2に対してTh2細胞よりも強い抑制効果が見られたことから、セロトニンがILC2をより選択的に抑制する可能性が示唆されている。この理由を理解するためにも、次年度はセロトニンがどのような分子機構でILC2やTh2細胞を抑制しているのか詳細に解析する必要がある。 セロトニンの免疫組織学染色によって、気管支にセロトニン強陽性の細胞がアルテルナリアの投与によって誘導されることが明らかになった。この細胞は血小板やマスト細胞など喘息病態で活性化することが既に知られているセロトニン産生細胞では無いことが示唆されている。気管支上に存在するセロトニン産生細胞としては他にPNECが考えられるが、PNECはCGRP産生を介して喘息の悪化に機能すると考えられているため、喘息によって誘導されたセロトニン陽性細胞がPNECであるのかは慎重に解析する必要がある。仮に喘息時に増殖したPNECがセロトニンを産生を介してアレルギー性炎症の抑制に関わることが明らかになれば、非常に新しい知見となる。
|
Strategy for Future Research Activity |
ILC2が高発現するセロトニン受容体Htr1bはGタンパク質共役受容体であり、Giタンパク質を介してcAMPを抑制する。ILC2がHtr1bを介して刺激を受け取っていることを確認するため、セロトニン刺激によるcAMPの変動をELISAで確認する。ILC2はVIPやCGRP刺激によって細胞内のcAMPが上昇し活性化することが明らかになっているため、これらとの共刺激も検討する。また、現在作製中のHtr1b KOを用いて、ILC2がHtr1bを欠損した場合にセロトニンによる機能抑制効果がキャンセルされるかを検討する。セロトニン刺激によってcAMPの変化が無かった場合、あるいはHtr1b KOで野生型同様セロトニンによる抑制作用が見られた場合は、Htr2aなど他の受容体の下流の確認や、セロトニン取り込み酵素による受容体を介さないセロトニンの作用機序を検討する。 内在性のセロトニン産生細胞を明確に性状解析するために、PNECマーカーであるCGRPやGRPとセロトニンとの共染色を試みる。また、この細胞がアレルギー性炎症の抑制に重要であるのかを検討するために、セロトニン合成酵素であるTph1の阻害剤をアルテルナリア誘導性喘息モデルマウスに投与し、気管支セロトニン陽性細胞が減少した場合に炎症状態が悪化するかを確認する。さらに、現在入手手続きを進めているTph1-floxedマウスを用いてPNECやマウス細胞特異的なTph1欠損マウスを作製し、各細胞から産生されるセロトニンがアレルギー性炎症に与える影響を精査する。
|
Research Products
(1 results)