2021 Fiscal Year Research-status Report
Neural Substrates of Antisocial Behavior in Anorexia Nervosa
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19K17088
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
磯部 昌憲 京都大学, 医学研究科, 助教 (10777981)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 神経性やせ症 / 反社会行動 / 罰への感受性 / 行動変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経性やせ症(AN)患者において万引き行為が多くみられることが知られており、重症度と関連することが報告されているが、ANと同じように行動変容に困難を抱える、嗜癖傾向のある精神疾患は数多くある中で、なぜANでこの傾向が顕著であるかは明らかではなく、その治療方法はいまだ確立されていないのが現状である。本研究は、AN患者における罰刺激によってもたらされる行動変容の起きづらさについて脳機能的MRI(fMRI)を用いて計測し、それに影響を与える認知心理学的特徴について健常対照群(HC)と比較検討することで、背景にある認知心理的要因および神経基盤を明らかにすることを目的としている。 万引き行為の状況下における行動や心理的反応を再現する目的で、万引き状況を模して経済ゲーム課題のInspection Game (Hampton et al. 2008)を一部改変し、fMRI下に実施する行動実験課題を作成、報酬や罰への感受性とそれに伴う実際の行動を測定することを目指している。この課題は雇用者・被雇用者による対戦ゲームであり、被雇用者はサボるか働くか、雇用者は査察するか査察しないかをそれぞれ選択する。被雇用者は、雇用者側の査察頻度やサボって査察された際の罰金額によって行動変容する必要がある。それぞれの被験者は被雇用者として参加し、働いているときに雇用者に査察を受ける、またはサボっているときに査察を受けなければ報酬を獲得する。 行動実験課題の妥当性の検討を目的として、HC群とAN群を対象としたパイロット研究として対戦状況を模した行動実験を実施したところ、AN群でHC群の比較において行動選択が失敗した直後の行動選択が異なることが明らかとなり、当初の予想通り状況に応じた行動変容の難しさを持つことが示唆された。現在その行動の違いの神経基盤について検討するべくfMRI実験を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの成果としては、脳機能的MRI下に実施する行動実験課題を、経済ゲーム課題のInspection Gameを改変し作成するとともに、HC群をパイロット研究にリクルートし、万引き場面を模した行動実験課題の妥当性検討のため、コンピューター上で課題を実施、実際の行動実験場面において罰に基づく行動変容が誘導されることが確認した。これに基づき本実験課題を実装したfMRIを用いた研究プロトコルを確立するにいたったが、コロナウィルス流行下により予定通りの脳画像研究実施が困難となったため、本実験前に実際に罰に基づく行動変容がAN群で低下しているか明らかにするべく、MRIスキャナー外での行動実験を実施した。一般的には罰金額が上がると、罰刺激からの学習からサボることは選択しづらくなるが、AN群においてはそのような適応的な行動変容が起こりづらいと仮定していたが、当初の予想通りAN群において柔軟な行動変容が行われづらいことを明らかとなった。今年度は、コロナウイルス流行が継続する中では、易感染傾向にあるAN患者に対して研究協力のために長時間の病院滞在を依頼することは、リスク管理の観点から行いづらく、また実際に同時期に病状悪化が見られるケースも散見される状況であったため、健康面に不安の比較的少ないHC群被験者を中心に計画を遂行し、AN群については次年度に実施する予定とした。fMRI下で実施した行動実験課題においても、HC群ではパイロット研究と同様に適応的な行動変容が観察されており、AN群への実施と画像比較解析が待たれる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究計画の完遂を目指し、コロナウィルス流行および不要不急の行動自粛の程度をみながら、昨年度HC群を中心に実施した脳機能的MRI研究を推し進め、今年度内にHC群15人への追加実施、AN群20人への実施を行う予定である。AN群とHC群に実施した行動実験結果については、報酬刺激や罰刺激への感受性などの心理検査結果との関連性を多角的に解析しており、その成果を令和4年度の国内・国際学会で発表していく予定としている。学会発表を通して、解析方法や結果解釈について関連分野の研究者との議論を深め、その成果を論文化して専門誌への投稿に進めていく。
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Causes of Carryover |
昨年度、完成した行動実験課題を用いた脳機能的MRI研究を、HC群およびAN群に実施する予定であったが、AN群が身体的に脆弱で感染リスクが高いため、コロナウィルスの流行が続く状況を鑑み、HC群を中心に実施することとした。HC群においても、コロナウイルス流行下の行動制限およびリスク行動自粛の状況のもと、AN群の参加人数減を補うだけの被験者リクルートにはいたらず、予定通りの被験者数に対する脳画像研究実施が困難であったため、使用額は想定より減額となった。また同様の状況下のため、旅費として設定している予算額の使用が昨年度においても困難であった。次年度においては、本年度実施できなかったAN群を中心に脳画像研究を実施していくとともに、すでに得られた中間結果について2022年6月に開催される国際摂食障害学会など国内外の専門学会で発表していく計画である。
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Research Products
(3 results)