2019 Fiscal Year Research-status Report
Epstein-Barr virus再活性化による潰瘍性大腸炎難治化の機序の解明
Project/Area Number |
19K17430
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 聡 京都大学, 医学研究科, 医員 (90837692)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 炎症性腸疾患 / Epetein-Barr virus / 潰瘍性大腸炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
Epstein-Barr virus(EBV)再活性化の機序解明のため、免疫系ヒト化NOGマウスを用いた基礎的検討に入る計画だが、動物実験に入る前に、EBV再活性化を来した潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis, UC)患者の病態的特徴を更に明確にする必要があると判断した。 UC患者116人、244検体まで症例を増やし大腸炎症粘膜を解析したところ、EBVはCMVと同時に再活性化する傾向にあり、EBV再活性化はカルシニューリン阻害剤治療を受けた症例、そして抗TNF-α抗体製剤治療を受けた症例に有意に多く認められた。カルシニューリン阻害剤はCD8 T細胞を抑制することにより、溶解感染期EBVの感染細胞を抑制できずEBV再活性化を来すと推測された。一方、TNF-α抑制環境下でEBV再活性化が誘導されやすいことも新たに示唆され、腸管におけるEBVの複製の制御に関与することが推測された。 また、EBV再活性化を来した症例では、内視鏡所見として浮腫・潰瘍形成が有意に多く、血管炎様の病態が疑われた。潜伏感染期のEBVはBリンパ球に感染しているが、溶解感染期のEBV感染細胞については免疫染色で確認中である。 現在、免疫不全マウスであるNOGマウスに臍帯血移植を行い免疫系をヒト化させた免疫系ヒト化NOGマウス(huNOGマウス)の作製準備中であり、こちらが安定して管理でき次第、EBV感染を起こし腸炎実験に取り掛かる計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Epstein-Barr virus(EBV)再活性化の機序については未だ明らかになっていないことが多く、動物を用いた基礎的検討に入る前に、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis, UC)患者におけるEBV再活性化を来した患者背景を明確にする必要があると判断した。即ちEBV再活性化を来しやすい免疫学的環境、内視鏡的・組織学的特徴を更に検討する方針とした。 EBV再活性化を検討するため、UC患者の炎症粘膜から採取した大腸生検検体を244例まで増やし、EBV再活性化の有無と疾患背景について解析を行った。まずは、EBV再活性化が軽症例に比べ重症例・難治例に多く認められ、UCの病態への関与が確認された。EBV再活性化はCMV再活性化と同時に多く見られ、EBV再活性化はカルシニューリン阻害剤治療ないし抗TNF-α抗体製剤治療を受けた患者に有意に多く認められた。カルシニューリン阻害剤はCD8 T細胞を抑制するため、EBV再活性化を来した大腸粘膜における細胞分布についてはflowcytometoryで確認する方針である。また、EBVはBリンパ球に潜伏感染するが、再活性化したEBVに親和性の高い細胞については免疫染色で確認中である。一方、TNF-α抑制環境下においてEBV再活性化が誘導されていたことから、消化管においてウイルス複製の制御にTNF-αが関与していることを示唆できた。 現在、免疫不全マウスであるNOGマウスに臍帯血移植を行い免疫系をヒト化させる準備中であり、こちらが確立でき次第、EBV感染を起こす予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
潰瘍性大腸炎患者から採取した大腸炎症粘膜において、再活性化したEBVの感染細胞の同定および周囲免疫担当細胞について、免疫染色やflowcytometoryを用いて解析を行う予定である。 免疫不全マウスであるNOGマウスを準備が整えば、臍帯血移植を行いヒト免疫系の定着を開始する(huNOGマウス)。EBVを感染させたhuNOGマウスを作製し、安定した管理ができれば、EBV感染huNOGマウスにdextran sodium sulfate (DSS) 投与による薬剤誘発性の慢性腸炎(潰瘍性大腸炎モデル)を発症させ、EBV感染マウスと非感染マウスとを比較し、腸炎の重症度やEBV再活性化について検討を行う。また、EBV再活性化の初期発現遺伝子であるBZLF1を誘導する遺伝子についても網羅的に解析し、TNF-αとの関連についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 免疫系ヒト化NOGマウスは継代使用ができず、その都度臍帯血移植を行い免疫系をヒト化させる必要性がある。従って、潰瘍性大腸炎患者におけるEBV再活性化の解析を本年度は主に行い、再活性化に関与するサイトカイン環境・免疫環境について更なる検討を行った。その反面、マウス実験の開始に遅れが生じており、マウス購入を予定していた経費が軽減され、次年度の使用額が発生した。 (使用計画) 次年度の研究遂行に必要とされる経費は、実験マウスの購入、飼育・管理、各種抗体および試薬、情報取集および発表のための旅費を予定している。とくにNOGマウスの購入・飼育、臍帯血移植によるヒト免疫系細胞の定着など、マウス管理に多めの予算管理を要する。
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