2019 Fiscal Year Research-status Report
尿を用いた非侵襲性肝細胞がん腫瘍マーカーの開発 ビクニン上の糖鎖構造を標的として
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19K17445
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
土本 純 愛知医科大学, 付置研究所, 助教 (70632868)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 肝細胞がん / 腫瘍マーカー / 糖鎖 / コンドロイチン硫酸 / ビクニン |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞がんは早期発見によって5年生存率が50%以上上昇する。一方で、高危険群への定期的な診察を行っている日本であっても、早期発見は60%にとどまる。そこで,本研究では肝細胞由来タンパク質であるビクニン上のコンドロイチン硫酸鎖を標的とした、非侵襲性尿中肝細胞がん腫瘍マーカーを開発することを目標としている。本研究は、肝細胞がんの早期発見に貢献するだけでなく、採血が不要となるため、より安全な検査方法を提案できると考えている。 2019年度は肝細胞がん患者由来の尿試料11検体,他の肝疾患患者由来尿試料2検体,健常人由来尿試料2検体,計15検体の提供を受けた。これらの試料を用いて,ビクニンタンパク質結合コンドロイチン硫酸鎖の抽出・分析方法の最適化を図りつつ,実際にコンドロイチン硫酸鎖の分析を行った。 提供された尿試料からトリプシン結合ゲルを用いて,ビクニンタンパク質を精製した。精製したビクニンタンパク質に結合しているコンドロイチン硫酸鎖をアルカリけん化によって分離し,陰イオン交換クロマトグラフィーによって高硫酸化コンドロイチン硫酸鎖画分を得た。この高硫酸化コンドロイチン硫酸鎖画分の組成を分析した。また,尿中クレアチニン濃度を測定し,得られたコンドロイチン硫酸鎖組成の結果を補正した。肝細胞がん患者由来及び他の肝疾患もしくは健常人のコンドロイチン硫酸鎖組成を比較したが,わずかに違いはみられるものの,有意差は得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでに尿試料15検体を分析した結果,有意差が得られておらず,検体数を更に増やし検証する必要がある。しかし,2020年2月以降は新型コロナウイルス感染拡大防止のためヒト生体試料の取り扱いを中止しており,今後の検体取得については不透明な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト生体試料の取り扱いを中止しているため,既存のシングルセルトランスクリプトーム解析及びプロテオーム解析のデータの分析を行い,ビクニン結合コンドロイチン硫酸の肝細胞がん腫瘍マーカーとしての可能性を探る。また,肝細胞のがん化にともなうビクニン上コンドロイチン硫酸鎖の組成変化を,マウス肝細胞癌モデルや培養細胞系を用いて検証できないか検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のためヒト生体試料の取り扱いを中止しており,試料の分析にかかる費用が未使用となったため,次年度繰越額が生じた。繰越額については,新たに導入を検討するマウス肝細胞がん実験系および培養細胞系の費用に充てることとしたいと考えている。
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