2019 Fiscal Year Research-status Report
The analysis of the mechanism of DPP-4 inhibitor-related bullous pemphigoid
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19K17760
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鄭 ビョウ 北海道大学, 医学研究院, 助教 (50833802)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 水疱性類天疱瘡 / DPP-4阻害薬 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、HLA-DQB1*03:01をもつヒトにおけるBP180反応性Tリンパ球の有無の解析を行った。HLA-DQB1*03:01をもつ水疱性類天疱瘡(BP)患者2名からPBMCを採取し、96 well plateに3x10^5個のPBMCを入れ、全長BP180リコンビナントタンパクを加えて刺激した。陽性コントロールとして、抗CD3抗体と抗CD28抗体でPBMCを刺激した。陰性コントロールとして無刺激群を置いた。また、正常ヒトPBMCも同時に刺激して比較した。結果は、、抗CD3/CD28抗体刺激群では十分な刺激が得られたものの、全長BP180リコンビナントタンパク刺激群では反応がみられなかった。 次に、DPP-4阻害薬によるTリンパ球の免疫応答の変化を解析した。まず、DPP-4阻害薬関連BP患者(n=6)及び健常人(n=9)からPBMCを採取し1x10^6個のPBMCをDPP-4阻害薬(Sitagliptin 10mg/ml, Vildagliptin 20mg/ml)を加えたうえでPHAでTリンパ球を48時間刺激した。刺激後更に48時間培養し、PMA+Ionomycinで刺激してCD4+T細胞からのサイトカイン産生をフローサイトメトリー法で解析した。Sitagliptin投与群では、DPP-4阻害薬関連BP患者6例中4例(66.7%)でIL-4の産生が増加したが、健常人では9例中2例(22.2%)に留まっていた。一方、Vildagliptin投与群では、DPP-4阻害薬関連BP患者6例中3例(50%)でIL-4の産生が増加したが、健常人では9例中3例(33.3%)に留まっていた。以上より、DPP-4阻害薬関連BP患者のPBMCはDPP-4阻害薬によってTh2に偏りやすい傾向があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HLA-DQB1*03:01をもつヒトにおけるBP180反応性Tリンパ球の有無の解析を行ったところ、予想に反してBP患者PBMCは全長BP180リコンビナントタンパクに反応しなかった。原因として、全長BP180リコンビナントタンパクで刺激を入れるためにはこのタンパクがPBMCに含まれる抗原提示細胞に取り込まれて、T細胞に抗原提示する必要があるが、全長BP180リコンビナントタンパクが180kDaと大きいためうまく取り込まれていない可能性が考えられた。本実験でBP患者PBMCがBP180リコンビナントタンパクで刺激できないため、BP180反応性T細胞のセルライン樹立には至っておらず、この点ではやや遅れていると判断する。 一方、DPP-4阻害薬関連BP患者及び健常人のPBMCにDPP-4阻害薬を加えて刺激しサイトカイン産生を解析する実験では、DPP-4阻害薬関連BP患者では健常人よりDPP-4阻害薬の影響を受けてTh2サイトカインを産生しやすくなる傾向が明らかとなった。この研究は当初の予定よりも早く進行している。 以上、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はDPP-4阻害薬関連BP患者PBMCを用いてBP180反応性T細胞のセルライン樹立を計画していたが、全長BP180リコンビナントタンパクでの刺激がうまくいかないため、困難な可能性が高いと予想される。そこで、DPP-4阻害薬関連BPの病態をより正確に把握するために、DPP-4阻害薬関連BP患者皮膚およびBP患者皮膚のT細胞におけるCD26(=DPP-4)の発現を免疫組織染色および蛍光抗体法で解析する。また、真皮のFibroblastもCD26を発現することが知られており、本症への関与が興味深い。そこで、DPP-4阻害薬関連BP患者皮膚およびBP患者皮膚のFibroblastをvimentinとCD26で二重染色し、その数やCD26発現強度の差を比較する。さらに、DPP-4阻害薬関連BP患者およびBP患者の血中の可溶性CD26を測定し比較する。 次に、ScurfyマウスにDPP-4阻害薬を生後1~14日後に投与し、BP抗原に対する自己抗体の産生やCD4+Tリンパ球からのサイトカイン産生、皮疹の変化などを生理食塩水投与群と比較する。ただし、Scurfyマウスは全身の自己免疫により正常マウスに比べてサイズが小さく弱いため、薬剤投与実験がうまくいかない可能性がある。そこで並行して、CD26(=DPP-4)ノックアウトマウス(入手済み)とFoxp3+/-マウスを掛け合わせてCD26ノックアウトscurfyマウスを作製し、その自己免疫応答をscurfyマウスと比較する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、DPP-4阻害薬関連BP患者PBMCの全長BP180リコンビナントタンパクによる刺激がうまくいかないため、BP180反応性T細胞のセルライン樹立に至らず、これに必要な培地や抗体等の費用が予定より低かったことや、情報収集のために参加予定だった学会に諸事情により出席できなかったことが挙げられる。 今後は、これまで計画していた実験の実施に必要な試薬の購入に充てるほか、新たに計画した患者皮膚のT細胞およびFibroblastのCD26染色実験や可溶性CD26測定実験に用いる試薬や抗体の購入費、CD26ノックアウトscurfyマウスの作製にかかる動物飼育費や免疫応答の解析に必要な抗体や試薬の購入に充てる。また、当初参加を予定してた米国研究皮膚科学会が中止になったため、別の学会(日本研究皮膚科学会や水疱症研究会を想定)での成果発表を予定しており、そちらの旅費や参加費として支出する。
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