2020 Fiscal Year Annual Research Report
多発性骨髄腫の酸代謝の実態と酸代謝を標的とした新規抗腫瘍療法の創出
Project/Area Number |
19K17858
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
藤井 志朗 徳島大学, 病院, 助教 (00618473)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 酸性環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨髄腫細胞はTDAG8、OGR1やTRVP1などの酸感受受容体を発現しており、pH6.8で培養するとAktのリン酸化とPIM2蛋白発現が増加した。PIM阻害薬SMI-16aやそれをリード化合物合成した化合物Xは骨髄腫細胞の生存因子であるIRF4やMcl-1の発現を抑制し、細胞死が誘導された。この作用は酸性環境下でより強く見られた。Bendamustineは酸環境下でより強く骨髄腫細胞のPIM2発現を抑制し抗腫瘍作用を発揮した。酸性環境における骨髄腫細胞の生存維持、薬剤耐性の獲得に、PIM2が重要な役割を演じていることが示唆された。 癌細胞はモノカルボン酸トランスポーター(MCT)により乳酸を細胞外に排出することにより酸性環境を形成するが、細胞内pH(pHi)を高め至適な細胞内環境を形成している。MCT阻害薬alpha-cyano-4-hydroxy cinnamate (CHC)は、用量依存性に骨髄腫細胞株の乳酸の排出を抑制し、骨髄腫細胞に細胞死を誘導した。CHC と乳酸産生促進薬metforminを併用するとpHiがさらに低下するとともに協調的な細胞死が誘導された。また、CHCはBCRP1高発現細胞株RPMI8226、KMS11のBCRP1 mRNAの発現をHDAC依存性に抑制し、BCRP1の基質であるmitoxantroneの細胞内停滞と細胞傷害活性を高めた。さらに、CHC はこれらの細胞株のSP分画を消失させ、コロニー形成能も抑制した。従って、骨髄腫細胞の生存・増殖は解糖系への依存度が高いが、解糖系で産生される乳酸の細胞外排出を抑制するとpHiが低下し骨髄腫細胞は容易に死滅すること、また乳酸の排出の抑制はBCRP1の機能と発現を抑制し、薬剤耐性分画であるSP分画や骨髄腫前駆細胞も効率よく傷害しうることが示された
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