2020 Fiscal Year Research-status Report
S1Pの腫瘍関連免疫細胞に与える影響および乳癌制御機構の解明
Project/Area Number |
19K18049
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
土田 純子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (90769415)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スフィンゴシン-1-リン酸 / 脂質メディエーター / 乳癌 / 腫瘍関連免疫細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌を取り巻く腫瘍微小環境中では癌に対する免疫を抑制する、抑制T細胞やマクロファージ等の腫瘍関連免疫細胞(TAIC)が重要な役割を担っている。スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、脂質でありながら蛋白質と同じように細胞情報伝達物質として働く脂質メディエーターである。本研究の目的は、「乳癌患者の腫瘍微小環境において、S1PがTAICに作用することで腫瘍免疫微小環境の形成に寄与し、癌の浸潤、転移や薬物療法の効果に影響を及ぼしている」という仮説を検証し、S1PのTAICに対する役割とその臨床的意義を明らかにすることである。これまでの研究で、乳癌手術検体中のS1P濃度は傍腫瘍乳腺組織や正常乳腺組織よりも腫瘍組織内で最も高いことを発見した。また、The Cancer Genome Atlasのデータベースを用いた網羅的解析では、S1Pの産生酵素であるスフィンゴシンキナーゼ1(SPHK1)の発現が上昇している腫瘍組織では、腫瘍免疫にかかわる遺伝子の発現が上昇していることを発見した。本年度は、乳癌手術検体を用いて組織中S1Pを測定し、TAICに関連する蛋白発現について免疫組織化学で検討を行った。リン酸化SPHK1が強発現し、S1P濃度が高い症例では、TAICの腫瘍への集簇性が高い可能性が示唆された。以上の研究成果を論文として報告した。さらにS1PとTAICとの関係について、その作用メカニズムを追究するために、S1P濃度を既に測定した乳癌手術検体について、追加でRNAシークエンスを行い、乳癌におけるS1P濃度とS1P関連遺伝子及びTAIC関連遺伝子の発現について網羅的に解析を行った。データを統合解析することによりS1PによるTAIC制御機構の解明の足掛かりとなることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は研究課題Bについて研究を推進し、計画通りに進行している。以下に進捗状況の詳細を記載する。 課題研究B 乳癌手術検体によるS1PのTAICへの作用と臨床的意義の解明:乳癌手術検体を用いて、抗リン酸化SphK1(pSphK1)抗体とTAICの表面マーカーによる免疫組織化学を行い、SphK1の活性化とTAICの関連性を検証した。乳癌手術検体を対象とし、質量分析装置を用いてS1Pを含むスフィンゴリン脂質のリピドミクス解析を行い、免疫組織化学のデータと合わせて統合解析を行った。S1Pの濃度が高く、pSphK1の強発現する症例では、CD4、CD8、CD68およびCD163の発現も強い傾向が見られ、TAICの腫瘍への集簇性が高い可能性が示唆された。さらに、S1P制御機構がTAICに関わるメカニズムを追究するために、S1P濃度を測定済みの乳癌手術検体について、RNAシークエンスを施行し、S1Pの濃度と、S1P関連遺伝子発現、TAIC関連遺伝子発現について現在統合解析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は主に課題研究について研究を推進し、論文化を行う。 課題研究A 乳癌細胞移植マウスモデルを用いたS1PによるTAIC制御機構の解明:癌と宿主のSphK1が腫瘍免疫微小環境に及ぼす影響を調べるために、SphK1をノックアウトもしくは過剰発現させた乳癌細胞を、SphK1ノックアウトおよび野生型マウスの乳腺に各々同所性に移植し、腫瘍の増殖や転移を評価し、腫瘍微小環境を組織学的に解析する。TAICの組織学的な検索として、腫瘍浸潤リンパ球の同定にはCD3/4/8等のT細胞マーカーを用い、腫瘍関連マクロファージの同定にはF4/80、CD11b(マウス)、CD68(ヒト)、制御性T細胞の検出にはFOXP3等の特異的表面マーカーを用い、SphK1により産生されたS1PがTAICに及ぼす影響を解明する。 課題研究B 腫瘍組織におけるS1P濃度とTAICに関連する因子のRNA発現との関係を検証する。
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Causes of Carryover |
年度内に発注した備品の納入が、年度内に間に合わなかったため。
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