2021 Fiscal Year Research-status Report
廃用性筋萎縮の発生に関わるミトコンドリア・小胞体膜接触領域の機能解明
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19K18501
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
杉浦 宏祐 徳島大学, 病院, 助教 (60837243)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 廃用性筋萎縮 / ミトコンドリア / Mitofusin-2 / MAM |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮時の機械ストレス感知機構において、ミトコンドリアと小胞体との近接領域であるMitochondria-associated membrane (MAM)及びそのアンカータンパク質であるMitofusin-2(MFN2)の機能に注目して検討している。 令和2年度までに10日間尾部懸垂による後肢免荷を行い廃用性筋萎縮を誘導したマウスヒラメ筋(SOL)においてMAM形態を評価した結果、SOLでは通常飼育群よりも尾部懸垂群で有意にMAM減少していることが明らかとなった。MAM構造の重要なアンカータンパク質であるMFN2の存在が筋萎縮に関与しているかを解析するために、筋特異的MFN2欠損マウスを用いて同様の10日間尾部懸垂実験を行った。その結果、MFN2欠損マウスのSOLは野生型マウスよりも筋重量の減少が5~10%増加した。また、MAM数の変化については、MFN2欠損マウスでは安静時にSOLでMAM数は野生型マウスに比べ減少していたが、尾部懸垂時の比較ではMAM数は野生型マウスと比較して有意な変化は認めなかった。 更に、令和3年度に尾部懸垂による後肢免荷の影響について経時的な変化を解析した。免荷後1日と10日のMAMの形態について解析した結果、SOLにおいて既に減少が明らかとなっている10日後以上に1日後ではMAM数が減少していることが明らかとなった。以上のことから筋萎縮誘導時にSOLにおいてMAMは減少するが、特に環境変化の発生初期に大きく影響を受けていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで、SOLに対して廃用性筋萎縮誘導を行った結果、通常飼育マウスに比較して筋萎縮誘導慢性期マウスにおいてMAMの減少を認めた。さらにMAMのアンカータンパク質であるMFN2欠損マウスで同様の実験を行った結果、通常飼育マウスではMAMの減少を認めたが、筋萎縮誘導慢性期のマウス同士の比較ではMFN2欠損マウスは野生型マウスに比較してMAM数には有意な変化が見られなかった。以上のことからMFN2はMAM構築の一役を担っているタンパク質であるが、筋萎縮誘導時慢性期においてはMAMはMFN2の他の制御機構が関連していると考えられた。 続いて、筋萎縮誘導初期におけるMAM形成数の変化を検討した結果、野生型マウスでは萎縮誘導慢性期よりも更にMAMが減少していることが明らかとなった。このように野生型ママウスにおける筋萎縮誘導時のMAM数は経時的に異なることが分かった。 尾部懸垂による筋萎縮誘導実験は、マウス個体に比較的強いストレスを与える実験となるため、食事摂取量やストレス耐性により解析データにばらつきが生じるため、当初よりもマウスを環境に慣らせる期間を長く設けたり、解析個体を増やすなど計画段階よりも準備に時間を要するためやや進捗が遅れている状態となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、マウスSOLに対して廃用性筋萎縮誘導時、初期の方が慢性期よりもMAMは減少していることが明らかとなった。 さらに、MAMのアンカータンパク質であるMFN2が筋萎縮誘導慢性時にどのようにMAM形態に関与しているかを解析解析した際には、慢性期には野生型マウスとMFN2欠損マウスではMAM数に有意な変化が見られなかった。 以上のことからMFN2はMAM構築の一役を担っているタンパク質であるが、尾部懸垂による筋萎縮誘導の慢性期にはMFN2以外の他の制御機構が関連してMAMが減少に誘導されている可能性があると考えられた。 今後は慢性期よりもよりMAMの減少が顕著であった筋萎縮誘導初期においてMFN2の存在がMAM形態に影響を及ぼすかどうかを解析し、影響する場合はその機序を解明する予定である。
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Causes of Carryover |
海外からの備品納入に遅れが生じ研究計画に遅れが生じた。また、国内外の学会や研究会が現地で開催されないこともあり出張が予定よりも減少し、次年度使用額が生じた。 これまで、野生型マウスでは廃用性筋萎縮を誘導した際に、MAMが減少することが分かっており、更にMAMの減少は特に誘導初期に顕著であることが分かっている。しかし誘導慢性期には野生型マウスと、MAMのアンカータンパク質であるMFN2筋特異的欠損マウスの間では有意な変化が見られなかったため、期間を延長してMFN2筋特異的欠損マウスにおいて誘導初期のMAMにおける変化を解析していくために使用する予定である。
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Research Products
(17 results)