2019 Fiscal Year Research-status Report
バイオ3Dプリンタにより創出する靭帯組織体を用いて靭帯再建を目指す研究
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19K18503
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
村田 大紀 佐賀大学, 医学部, 助教 (00772683)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 靭帯再建 / バイオ3Dプリンタ / 自動伸展循環培養容器 / 靭帯組織体 / 細胞構造体 / iPS細胞由来間葉系幹細胞 / 脂肪組織由来間葉系幹細胞 / 靭帯損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,靭帯損傷に対する新たな治療法の確立を目的に,バイオ3Dプリンタにより造形する細胞構造体を用いて,靭帯組織体を創出する計画である。 ①実験用ウサギ(日本白色家兎)の背部から脂肪組織を採取し,間葉系幹細胞を分離・培養した。その後,幹細胞を増殖させて細胞凝集塊を作製し,細胞数,培養期間,および使用する培地の違いが,凝集塊の大きさと真円度に与える影響について比較・評価した。その結果,細胞数と凝集塊の大きさは正の相関を示した一方で,培養期間と凝集塊の大きさは負の相関を示した。また,使用する培地が異なることによって,それらの相関にはばらつきが認められ,凝集塊の真円度にも大きな影響を及ぼすことが確認された。 ②上記①における凝集塊作製の条件検討実験を基に,バイオ3Dプリンタでの積層に適した凝集塊を作製し,チューブ状の細胞構造体を造形した。その後,自作の循環培養容器を用いて,構造体を一定期間培養して成熟させた後に,引張試験機を用いて構造体の破断強度[N/mm^2]を測定し,力学的特性を評価した。その結果,移植時の操作や縫合にも十分耐え得る構造体を,短期間で作製することに成功した。 ③上記とは別に,ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞とヒト線維芽細胞を増殖させ,凝集塊を作製して上記同様の検討を行い,それぞれの条件について比較・評価した。その結果,上記同様の相関が認められ,培地が異なることによっても,同様の現象が確認された。 ④上記③を基に,バイオ3Dプリンタでの積層に適した凝集塊を作製し,チューブ状の構造体を造形した。その後,自作の自動伸展循環培養容器を用いて,構造体を一定期間培養して成熟させた後に,引張試験機を用いて構造体の破断強度[N/mm^2]を測定し,力学的特性を評価した。その結果,短期間の成熟培養であったにも関わらず,靭帯組織の力学的特性に近い測定値を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①実験用ウサギから脂肪組織を採取し,間葉系幹細胞を分離・培養した。その後,幹細胞を増殖させて細胞凝集塊を作製し,細胞数,培養期間,および使用する培地の違いが,凝集塊の大きさと真円度に与える影響について比較・評価した。その結果,それぞれのパラメーターが互いに与える影響について確認することができ,パラメーター同士における相関関係を見出すことに成功した。またそれにより,バイオ3Dプリンタでの積層に適した凝集塊の作製条件を確立することにも成功した。 ②その後,上記①において確立した条件を基に,バイオ3Dプリンタで凝集塊を積層し,チューブ状の細胞構造体を造形することにも成功した。また,構造体を一定期間培養して成熟させることで,移植時の操作や縫合にも十分耐え得る力学的特性を有した構造体を,短期間で作製することにも成功した。さらに,作製したチューブ状構造体を切り開いてシート状とし,ウサギにあらかじめ作製しておいた膝蓋靭帯欠損部に縫合して埋植する方法で,自家移植することにも既に成功しており,現在は経過観察中である。 ③一方で,ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞とヒト線維芽細胞を増殖させて凝集塊を作製し,上記同様の条件検討を行うことで,バイオ3Dプリンタでの積層に適した凝集塊の作製条件を確立することにも成功した。 ④その後,上記③において確立した条件を基に,バイオ3Dプリンタで凝集塊を積層し,チューブ状の構造体を造形することに成功した。さらに,自作の自動伸展循環培養容器を用いて,構造体を一定期間培養して成熟させることで,靭帯組織の力学的特性に近い構造体を作製することにも成功した。今後は,靭帯分化誘導因子等を用いて,より長期間の培養を施すことにより,さらに高い破断強度[N/mm^2]を有する靭帯組織体を創出する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において今年度は,以下①~④の実験成果を得ることに成功した。 ①実験用ウサギの脂肪組織から分離・培養した間葉系幹細胞を増殖させ,バイオ3Dプリンタでの積層に適した細胞凝集塊の作製条件を確立した。 ②バイオ3Dプリンタで凝集塊を積層し,ウサギ脂肪由来間葉系幹細胞のみからなるチューブ状の細胞構造体を造形した。また,自作の循環培養容器を用いて,構造体を一定期間培養して成熟させることで,移植時の操作や縫合にも十分耐え得る力学的特性を有した構造体を作製した。さらに,作製したチューブ状構造体を切り開いてシート状とし,ウサギの膝蓋靭帯欠損部に縫合することで自家移植した。 ③ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞とヒト線維芽細胞を増殖させ,バイオ3Dプリンタでの積層に適した凝集塊の作製条件を確立した。 ④バイオ3Dプリンタで凝集塊を積層し,ヒトiPS細胞由来間葉系幹細胞とヒト線維芽細胞からなるチューブ状の構造体を造形した。さらに,自作の自動伸展培養容器を用いて,構造体を一定期間培養して成熟させることで,靭帯組織に近い力学的特性を有した構造体を作製した。 上記①と②については今後,ウサギの膝蓋靭帯欠損部へ自家移植した構造体について,移植後3週,6週,および12週において,肉眼的および組織学的に評価する予定である。また,上記③と④については今後,靭帯分化誘導因子等を用いて長期間培養することにより,さらに高い破断強度[N/mm^2]を有する靭帯組織体の創出を目指す予定である。さらに来年度は,これまでに得られたデータを統括して検討を重ね,国内および国外での学会において積極的に発表を行うと共に,そこで得られた討論の内容を踏まえた上で,本研究内容を学術論文として公表することを目指す予定である。
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Research Products
(6 results)