2019 Fiscal Year Research-status Report
鼻過敏症の病態生理におけるTRPM8の役割についての解析
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19K18760
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 裕也 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00770190)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 鼻過敏症 / アレルギー性鼻炎 / 血管運動性鼻炎 / TRPM8 / メントール |
Outline of Annual Research Achievements |
鼻過敏症の病態生理におけるTRP(Transient potential receptor)チャンネルの役割を解析することが本研究の目的である。特に冷気の吸入刺激が鼻症状のトリガーになることに着目し冷覚受容に関わるTRPM8の発現、機能解析を行っている。これまでのマウスを用いた検討ではアレルギー性鼻炎モデルマウス、加齢モデルマウスの鼻組織においてTRPM8の発現が増加していることが確認され、またTRPM8のアゴニストであるメントールを点鼻すると双方のモデル動物でくしゃみの回数が増加することを確認した。今回はより中枢で生じている反応についての評価とTRPM8knockoutマウスを用いた検討を行った。まず、中枢の活動を評価するため、アレルギー性鼻炎モデルマウスおよびコントロールマウスに対しメントールを点鼻し、鼻粘膜の侵害情報の中継核である三叉神経尾側亜核のc-fos陽性細胞数を計測した。その結果、両群で有意な差は認めなかった。TRPM8knockoutマウスを用いた検討では主に行動実験を行った。knockoutマウスおよびwild typeマウス双方のアレルギー性鼻炎モデルに対してメントール点鼻後のくしゃみ回数を計測したが両者に有意な差は認めなかった。一方、メントール点鼻前後での抗原誘発性くしゃみ回数の変化について評価したところ、wild type由来のアレルギー性鼻炎モデルマウスではメントール点鼻後に抗原誘発性のくしゃみ回数が増加したのに対し、knockoutマウス由来のアレルギー性鼻炎モデルではメントール点鼻前後で抗原誘発性のくしゃみ回数に有意な変化は見られなかった。TRPM8が欠損したマウスでもある程度メントール点鼻に反応してくしゃみをする結果となり、鼻過敏症のメカニズムにTRPM8が関与することを十分に証明することができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の検討ではTRPM8knock outマウスを用いることでより直接的に鼻過敏症の病態生理、特に知覚神経の神経応答におけるTRPM8の関与を評価することができた。目標としていた実験はおおむね予定通り遂行できているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
TRPM8knockoutマウスを用いた検討が中心となる。メントール点鼻液の温度を変更するなど条件を変えて行動実験を継続する。また、アレルギー性鼻炎モデルだけでなく、加齢モデルマウスでもknockoutマウスとwild typeでメントールに対する反応に差異がないか検討する。これらのモデルマウスでメントール点鼻に対する反応に違いが確認された場合、さらに三叉神経尾側亜核でのc-fos発現も評価したいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)施設内にある既存の試薬で研究の一部が遂行可能であり、試薬購入に関わる費用が予定額を下回ったため。また、knock outマウスの繁殖が軌道に乗り始め、新規に購入する数を減らすことができるようになったため。 (使用計画)これまで行動実験にしか使用していなかったknock outマウスをPCR組織学的解析にも使用するため、より多くの動物を確保する必要があり、その購入や飼育費に充てる予定である。その他、研究遂行に必要な各種試薬の購入費用として使用する予定である。
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