2022 Fiscal Year Annual Research Report
320列ADCTを用いた下咽頭癌術後嚥下機能障害の解析
Project/Area Number |
19K18766
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
丸尾 貴志 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00774118)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 頭頸部癌術後嚥下障害 / 遊離空腸再建後嚥下障害 / 320列ADCT / 内視鏡下嚥下機能改善手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
頭頸部癌切除再建手術を受けた症例を対象に320列ADCTを用いて術後嚥下動態の解析を行った。対象疾患は、当初は下咽頭癌のみだったが、中咽頭領域の解析も有用と考え、中咽頭癌症例も追加して症例集積をおこなった。 中咽頭癌術後再建症例では、患側舌骨上筋の切除により、喉頭挙上が健側に牽引される様に傾いて起っていた。また、軸位断で確認すると回旋運動も加わっていた。これらの運動で、嚥下したバリウムは患側に流れていくが、誤嚥につながるような動態にはなっていなかった。その際の咽頭粘膜の収縮について解析すると、健側のみの粘膜が収縮し、再建皮弁と接着し圧を作り出していた。再建皮弁が薄い前腕皮弁だと、咽頭収縮が完全に成されず、咽頭にバリウムが残存しているのが確認できた。中咽頭において、咽頭収縮に十分なボリュームの皮弁が充填されていない場合、嚥下動態に悪影響を与える可能性が示唆された。 下咽頭癌再建症例、特に遊離空腸再建を行われた1例について詳細に解析を行った。検査結果から、咽頭と空腸の吻合部が膨らみ、その部分で咽頭圧が吸収されてしまい、再建空腸下部まで圧が伝播していないことがわかった。さらに、咽頭圧で膨らんだ部位は、咽頭の嚥下運動が終了した後に、再度収縮し、貯留したバリウムを咽頭に押し戻してしまうことがわかった。咽頭部分を第三頚椎の中点(吻合部)を境界とし、上下に分けて咽頭体積を計測し、時間軸で追跡してみると、咽頭収縮の嚥伝搬が円滑に行われていないことが確認できた。 これらの結果をもとに、咽頭外部の構造に影響を与えない経口的嚥下機能改善術を開発し、論文化した。また遊離空腸で再建された症例に対して、咽頭圧で膨らんでしまう吻合部を抑えるような嚥下訓練、また、嚥下圧を抑えるような嚥下訓練を開発し、数例に効果が見られた。今後症例を集積していく予定である。
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