2020 Fiscal Year Research-status Report
『舌筋-腱-喉頭蓋軟骨』運動器の加齢変化の解析から安静時誤嚥の病態解明を目指す
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19K19321
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
北村 啓 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (90792367)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 摂食嚥下 / 機能解剖学 / 喉頭蓋谷 / 粘膜下組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の超高齢化に伴い、老化による運動機能低下が誤嚥を惹起する原因として大きな問題となっている。中でも、高齢者に多い安静時の誤嚥は喉頭蓋谷に貯留した異物を無意識に誤嚥し、肺炎を慢性化させることから、喉頭蓋谷の加齢変化に対する構造解析が病態解明のために急務である。申請者は献体を対象とした研究から、舌の筋萎縮が他の筋よりも大きいこと、喉頭蓋谷の粘膜下が舌筋と喉頭蓋軟骨、それらを接合する腱により構成されていることを見い出した。この結果から舌筋―腱―喉頭蓋軟骨を一つの運動器として捉え 『老化による舌筋の器質的な変化 → 舌筋の筋力 低下による喉頭蓋の後傾 → 喉頭蓋谷後壁の平坦化』 というカスケードで安静時の誤嚥の新たな 発症機序を考えた。そこで、本申請課題の目的は、加齢による舌筋―腱―喉頭蓋軟骨の形態変化が嚥下機能に与える影響を解明することである。また、喉頭蓋谷の加齢変化を基礎医学的に 解明することで誤嚥防止に貢献をし、健康寿命の延長にも波及効果があると考える。本申請課題では、加齢による舌筋―腱―喉頭蓋軟骨の形態が嚥下機能に与える影響を解明する。そのために、喉頭蓋谷の粘膜下を構成する舌筋―腱―喉頭蓋軟骨を一つの運動器として捉え、この運動器の形態変化と機能変化を解析する。本年度は、献体を対象として、喉頭蓋谷粘膜下の構造を明らかにした。また、舌筋―腱―喉頭蓋軟骨における個体ごと変化を組織学的に明らかにし、喉頭蓋谷の構造変化に対する嚥下機能の低下を形態学的に考察する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度の結果を踏まえ、今年度は19献体に被献体数を増やして研究を行った。また、組織学的な染色のみならず肉眼観察による舌・喉頭蓋領域の粘膜下組織の構造の解析を行った。その結果、喉頭蓋谷粘膜下では、舌骨喉頭蓋靱帯が喉頭蓋軟骨の外側縁に付着し、太い線維束として認められた。この靱帯は正中に向かうに従い、喉頭蓋軟骨の下縁に付着する細い線維束へ変化していた。一方、正中舌喉頭蓋ヒダ粘膜下では、舌骨後方の間隙が舌骨喉頭蓋靱帯を2層の線維束に分けていた。このうち上部の線維はオトガイ舌筋と筋腱接合部を形成する太い腱であり、下部の線維は舌骨と喉頭蓋の最下点をつなぐ脆弱な靱帯であった。これらの結果は海外雑誌に投稿する予定である。また、今年度行う予定であった生体を対象とした機能解剖学的研究は新型コロナウイルスの影響により、現在進捗していない。そのため上記のような区分になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、生体であるヒトを対象とした研究が難しい状況にあるため、動物実験に代用して嚥下機能観察を試みている。我々はすでにマウスの反復嚥下をVF下で観察することに成功しており、この研究モデルを波及させ老化型マウスと成獣マウスの嚥下機能時の形態学的変化を解析することにより、前年度行えなかった生体を対象とした機能解剖学的研究を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度の新型コロナウイルス流行により一時研究を行うことが不可能であった。また、現在においても蔓延が続く社会状況から、今年度も生体を対象とした臨床実験は不可能であると考えられる。そのため、今年度は実験動物を用いた嚥下反射時における喉頭蓋谷粘膜下の形態学的変化を解析する。
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