2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K19957
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
欠畑 岳 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 助教 (80824606)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 大腿筋活動 / 100m走 / 減速 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、短距離走(スプリント)のコーチング現場に科学的な根拠を提示するため、トップスプリンターの走動作およびそれを制御する神経機構を包括的に解明することである。 本年度(2021年度)は、研究課題①:スプリンターのスムーズな走動作に関わる『Switch』の検討、研究課題②:スプリントのシザース動作を可能にする筋活動の特徴(両脚の『Scissors』の検討)について、昨年度までに得られた知見を踏まえ、実際の100m走におけるこれらの筋制御の振る舞いについて検討し、論文発表および学会発表をすることができた。 100m走のレース後半では走速度が低下する「減速局面」が生じる。そのため、100m走のパフォーマンス向上には、「如何にして走速度をレース後半まで維持させるか」が重要となる。これまでの研究で、減速はピッチの低下に起因することが指摘されている。そこで、本研究では、このメカニズムを大腿筋活動(大腿直筋: RFおよび大腿二頭筋: BF)の制御パターンから検討した。陸上競技選手9名を対象に100 m走中のRF、BFの筋活動を記録し、最高走速度局面(50-70 m)と減速局面(80-100 m)における走速度、ピッチ、ストライド、筋活動のタイミングの変数を比較した。その結果、減速局面では走速度とピッチが減少した。また、RFとBFのタイミングがランニングサイクルの後半に遅れた。さらに、接地脚(BF)に対するスウィング脚(RF)のタイミング(“Scissors”)が遅延した。つまり、減速局面では両脚の大腿筋活動の制御パターンに変化が生じ、結果としてスウィング脚のリカバリー動作の遅れに繋がり、ピッチの低下を惹起していたと推察される。以上より、100m走のパフォーマンスの制限因子には、大腿筋活動の制御パターンが関与している可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、これまでに蓄積してきたスプリント時の大腿筋活動の制御の特徴("Switch"および"Scissors")にフォーカスし、実際の100m走におけるそれらの振る舞いについてまとめることができた。その結果として、本研究の大きな目的であるスプリントのトレーニング・コーチング現場に近い知見を示すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請者が注目している大腿筋は、スプリントにおける筋神経メカニズムメカニズムを理解するうえで特に重要な要素であると考えている。当初、筋シナジー(複数の筋群の協調性)の検討を視野に入れていたものの、引き続き大腿筋活動にフォーカスし、異なる走速度下あるいはトレーニングによる適応という点を明らかにしていきたい。
|
Causes of Carryover |
ほぼ計画通りに実験機材等を購入することができた。2021年度までに多くのデータを取得することができたため、最終年度は成果報告に必要な諸経費として使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)