2020 Fiscal Year Research-status Report
Estrogen prevents high-fat diet-induced obesity by suppressing an orexigenic function of ghrelin.
Project/Area Number |
19K20165
|
Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
中木 直子 京都光華女子大学, 健康科学部, 助教 (40804183)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | エストロゲン / グレリン / 高脂肪食 / 肥満 / 卵巣摘出ラット / 閉経モデルラット |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、エストロゲン(E2)の高脂肪食(HFD)誘発性肥満改善作用が糖質代謝へ与える影響について、卵巣摘出ラットを用いて検討を加えた。E2にはインスリン抵抗性を改善させる効果があることが知られているが、その詳細は明らかではない。また、グレリンには摂食亢進作用だけでなく、インスリン分泌抑制作用もあることが知られている。HFD摂食によるインスリン依存性グルコース代謝への影響とE2の作用を検討したところ、グルコース負荷試験では、インスリン抵抗性の指標であるグルコース・インスリン指数が、プラセボ群では普通食(SD)と比較してHFDで高値を示したが、E2群ではHFDによる変化は見られなかった。また、in vivoにてインスリン投与後に摘出した腓腹筋において、インスリンシグナリング経路におけるプロテインキナーゼB(Akt)のサブタイプであるAkt2のリン酸化が、SD摂食下では両群でみられた一方で、HFD摂食下ではE2群でのみ観察された。さらに、その下流にある分子量160kDaのAkt基質(AS160)のインスリンによるリン酸化は、いずれの食餌においてもE2群のみで観察された。このことから、HFDはE2欠乏下でインスリン感受性を低下させるが、E2補充は骨格筋におけるAkt2/AS160経路を活性化することで、インスリン感受性を改善する可能性が示された。 また、若年女性(7名)を対象に、摂食刺激によるグレリン分泌反応に女性ホルモンが関与する可能性を検討した。月経周期の3時期(月経期、排卵前期、黄体中期)に実験を行い、12時間絶食時と栄養補給飲料摂取後に採血し、血漿グレリン濃度の変化を見たところ、3時期とも同様に、空腹時に比べて摂取後にグレリン濃度は約半分まで低下することを確認した。しかし、血漿グレリン濃度は月経周期間での差は見られず、体脂肪率やBMIとの関連もないことが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請当初は、グレリンがもつ摂食亢進作用へのエストロゲン(E2)の作用部位の特定を2019・2020年度の2年間で行うことを想定していたが、研究結果を2020年3月に査読付き学術雑誌で発表することができたため、2020年度はE2の高脂肪食誘発性肥満改善作用について、糖質代謝へ与える影響についても着目し、検討を加えた。そして、E2補充は、卵巣摘出ラットの腓腹筋においてプロテインキナーゼB(Akt)のサブタイプであるAkt2/その下流にある分子量160kDaのAkt基質(AS160)経路を活性化することにより、インスリン感受性を改善することを明らかにすることができた。しかし、これらの作用にグレリンが関与しているかの検討についてはできていない。 また、2020年度当初は、2021年度に実施を予定していた女性の月経周期に伴うE2濃度の変動がもたらす体重・食事量・食嗜好性の変化と血漿グレリン濃度の関連についての実験にも着手する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の流行により、7名の被験者しか集められておらず、2021年度はより多くの被験者を集める必要がある。 以上のことから「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。
|
Strategy for Future Research Activity |
申請時に予定していた通り、女性の月経周期に伴うエストロゲン(E2)の変動がもたらす体重・食事量・食嗜好性の変化と血漿グレリン濃度の関連について、検討を進める予定である。 健康な女子大学生を被験者として募り、E2とプロゲステロンの血中濃度が異なる月経期・排卵期・黄体期の3期のうちのいずれも1日、計3日間とし、実験には以下の項目を実施する。 (1)各実験日における、体重・体脂肪率・食事量の測定を行う。食事量の測定には、実験日前後2日間を対象に秤量法を行う予定である。また、食嗜好性を調査するために、チョコレート(低糖質・高糖質のものを2種類用意)とチーズ(低脂肪・高脂肪のものを2種類用意)への嗜好性について、ビジュアルアナログスケールを用いて評価を行う。 (2)各実験日の食嗜好性調査の前に採取した血液からE2とグレリンの血中濃度を測り、上記(1)におけるE2の影響に対するグレリンの関与を明らかにする。 (3)高エネルギー高嗜好性食品摂取時のグレリンの反応におけるE2の影響を明らかにするため、こちらが準備した昼食(1000kcal / 脂質エネルギー比:50%)を摂取した後に採血を行い、グレリンの血中濃度を測定する。
|
Causes of Carryover |
2020年度実験で使用した試薬や抗体等は、所属大学の個人研究費等別の予算で購入することができ、予算(物品費)に余裕が生じたために次年度への繰り越しが可能となった。繰り越し分を次年度予算の物品費(試薬代など)やその他(英文校正費、論文投稿費)に繰り入れることにより、女性ホルモンのエストロゲンがもつ高脂肪食誘発性肥満改善作用とそのメカニズムの解明を目指す本研究課題の効果的な推進を計画している。
|