2020 Fiscal Year Annual Research Report
宙吊りの視点だけに自己は宿るか?身体的自己意識研究の新潮流をつくる身体不在錯覚
Project/Area Number |
19K20384
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
西山 雄大 長岡技術科学大学, 工学研究科, 講師 (90649724)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歩行 / 見えない身体 / 身体所有感 / 自己主体感 / 注意 / 身体的自己意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,様々な感覚を統合して得られる「私はいまここにいる」という実感(身体的自己意識)について,物理的身体の代替物の提示(従来研究でよく用いられる)をしない実験環境を構築し,そこで生じる体験や行動の変化を明らかにすることである。最終年度では主に“視覚的に身体が存在しない状況で歩行する”という状況をVRと実空間の歩行により構成し,「いまここに居る」という心理的な臨場感が伴われるか否かを検証した。実験参加者はヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着する。HMDには参加者が既に見知った場所の映像がリアルタイムで投影されている。ただし,どこを見てもその映像中に身体はなく,視点が宙吊りになっている。その状況で参加者は歩行するよう指示され,なお且つ,進路に障害物があってもそれを無視して通り抜けるよう求められた。その結果,障害物がある場合において,参加者の歩行時間は客観的にも主観的にもより遅く,歩行軌跡はより大きいゆらぎを示した。これは進行方向の障害物に対する行動としてある意味で自然な反応であるように思える。しかしながら,そのように障害物を認識して行動様態を変化させつつも,参加者は障害物をすり抜ける場合でさえ「ここ」という場所に関する感覚を有し,「いま」という時間に関する感覚も完全に失われることはなかった。つまり,“身体が存在しない”という非現実的なシチュエーションにおいても尚,歩行による体性感覚・前庭感覚のフィードバック,およびそれらに整合的な視点移動による多感覚同期刺激がある場合は「臨場感」が伴われることが示唆された。
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Research Products
(4 results)