2020 Fiscal Year Annual Research Report
植物を用いた低コストな鉛中毒の治療法および鉛汚染環境の修復法の開発
Project/Area Number |
19K20472
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中田 北斗 北海道大学, 獣医学研究院, 博士研究員 (60815273)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉛中毒 / 酸化ストレス / Moringa Oleifera / アミノレブリン酸脱水酵素 / toxicokinetics / Sprague Dawley rat |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、熱帯・亜熱帯地域に広く自生し、栽培も容易な植物モリンガを用いた廉価な鉛中毒の治療法および汚染環境の修復手法の開発を行なった。 2019年度ではSDラットを用いた投与実験を実施し、酢酸鉛および低・高容量のモリンガ葉粉末、葉抽出液、種子粉末の経口投与後に得られた血液や組織を用いて、モリンガ投与が鉛の蓄積および毒性に与える影響の検証を行なった。2020年度はこれら試料を用いたラボ実験を継続し、鉛のtoxicokinetics解析および種々の鉛毒性指標の定量を行なった。鉛の組織中蓄積量や排泄量に顕著な変化は認められなかったが、鉛暴露により上昇した血漿中カルボニル化タンパク質は、モリンガ葉粉末の投与により有意に回復し、酸化ストレスの軽減が認められた。アミノレブリン酸脱水酵素活性も葉粉末および種子粉末により有意に回復し、血液毒性の軽減が示された。 また、2019年度に行なった鉛汚染土壌カラムを用いた試験系を改良し、2020年度に追加実験を実施した。土壌カラムにモリンガ種子と樹皮をそれぞれ添加後、カラム上部から通水し、カラム下部から得られる滲出水中の鉛濃度を指標としたところ、樹皮では有意な濃度変化は認められなかったが、種子では一定の鉛濃度の減少が認められた。混合方法はカラム下層に種子のみの層を設けるよりも、カラム全体で均一となるように種子と土壌を混合する手法がより効果的であった。汚染土壌からの水を媒体とした鉛流出による拡散は、汚染地域においてよく見られる課題であり、本手法により一定の改善が可能であることが示唆された。 ラット試料を用いた遺伝子発現量解析および汚染土壌へのモリンガ苗の植栽実験では有用な結果が得られず、これらの点は今後の更なる研究が必要と考えられた。一方、上述の成果により、モリンガが鉛中毒および鉛汚染課題の克服に有用であることが示された。
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Research Products
(6 results)