2019 Fiscal Year Research-status Report
茶粕廃棄物の新規再資源化方法の開発および有害金属除去能の検討
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19K20485
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
中村 武浩 近畿大学, 薬学部, 助手 (60803773)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 茶粕廃棄物 / 排水の除染 / 有害金属の吸着除去 / 染料の吸着除去 / 再資源化方法の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては,研究課題「茶粕廃棄物の新規再資源化方法の開発および有害金属除去能の検討」の内,主に「有害金属除去能の検討」について調査を行なった。当初の予定では茶葉は9種(緑茶3種,紅茶4種,中国茶2種)としたが,実用性と適応拡大を志向し,21種の茶葉を用いて検討を行なっている(緑茶4種,紅茶6種,ハーブ茶2種,烏龍茶4種,健康茶5種)。これらの茶種は世界的にも消費量が多いものを含んでいるため,様々な場所で実用化が見込める。また,水質汚濁に係る法令で基準値が定めれている有害金属5種(カドミウム,鉛,クロム,ヒ素,水銀)だけでなく,基準値が定めれられていないことで問題となっている「染料排水」にも着目し,茶粕廃棄物の吸着除去能を検討した。染料排水は世界的な排水基準がなく,後処理が不十分なまま排水されるケースがあり,一部の地域や途上国では問題が深刻化している。これまでに,ある種の茶粕廃棄物の乾燥品が特定の染料を吸着することは報告されているが,その詳細については未解明の部分が多く,実用化にいたっていない。また,本研究課題で扱うほどの茶種での調査はされておらず,これらの知見が「染料排水の除染」に与える影響は非常に大きいと考えられる。除染対象としては,金属あるいは染料として全く異なる有害物質の様にも感じられるが,いずれの吸着機構にもイオンの電気的性質が関与していることが予想されるため,双方の結果から吸着様式を解析することができると考えられる。 基礎的な吸着能の検討により,21種の内の多くがメチレンブルー染料の吸着に有用であること,およびカドミウムと鉛の吸着においても同様に高い吸着性を示すことが明らかとなっている。有害金属については他の金属種に対する吸着性,染料についてはカチオン性染料の吸着における吸着挙動の解析(温度やpHによる影響,飽和吸着量の調査等)を行なっている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況としては,おおむね順調に進展している。当初の想定では,9種類の茶粕廃棄物を用いた検討から研究デザインを組み立てていたが,茶粕廃棄物による吸着除去による除染現象を詳細に解析するためには,より多くの種類の茶粕廃棄物で検討する必要があると考えた。また,その茶種についても,より広い地域で,より多く消費されている茶種を使用することで,有効利用化を実現しやすいと考えた。さらに,除染対象として染料を追加検討することとした。染料は世界的な排水基準がないために問題化が起こっている排水事象の一つであり,これを解決することはグリーンサスティナブルケミストリーの観点からも有益であると考えられる(染色事業の持続化や生態系への染料排水による負担の軽減など)。また,調査を進める中で発見したことではあるが,茶粕廃棄物による金属の吸着除去と染料の吸着除去における吸着現象の本質は,同一である可能性があり,2つの異なる除染対象を調査することが吸着機構の詳細な解析に大きく貢献することが予想される。 しかし,検討を行う茶種と除染対象を大幅に追加したため,総実験量も必然的に増加した。それを加味しても,現時点までに3種の有害金属への吸着能の評価(その内2種において有効性が確認),および5種の染料への吸着能の評価を行い,その内1種に高い有効性と,複数種の染料に有効性のある茶種を選定することを達成している。選定した茶種については,複数の吸着条件(温度やpH,振とう時間,飽和吸着量など)から吸着挙動を調査し,有効性の根拠となるデータの集積および吸着機構の解析を進めている段階である。本研究課題の設定期間として3年間での完遂を見込んでいることを考慮しても,順調な進展状況にあると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策としては,奇を衒わずに,当初の想定通りに検討をすすめることである。茶種や除染対象を追加したが,それの検討方法や解析項目については変更がないため,必要とされる基礎的実験を積み重ねることに尽きる。次年度の実施予定項目を具体的にあげると,残りの金属種(水銀,ヒ素)への吸着能の検討,金属吸着に有用な茶種の選定,複数の金属種における吸着能の評価,選定茶種における吸着挙動の解析,茶粕廃棄物の物理的性質の調査などである。これらの調査結果から吸着機構の解析を進め,最終年度となる3年目の段階では,実用化に向けた実験(乾燥工程を要しない茶粕廃棄物の保存条件の検討や腐敗速度の調査および腐敗抑制因子の探索など)を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が450円生じた理由の一つとして,本年度中に消費税の変更があったことがあげられる。年度内の中間での実施となったため,増税の差額で年度内の必要資材の見積もりを見直す必要が生じた。また,必要な物品のほとんどは実験の試薬や研究機材であるが,そのほとんどは数百円単位での価格ではないため,必要な資材の優先順位が高いものからとりそろえる関係上,端数として生じてしまった部分である。次年度の配分額と合わせて,差額が発生しないように研究資材に使用する。
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