2020 Fiscal Year Research-status Report
茶粕廃棄物の新規再資源化方法の開発および有害金属除去能の検討
Project/Area Number |
19K20485
|
Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
中村 武浩 近畿大学, 薬学部, 助教 (60803773)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 茶粕廃棄物 / 排水の除染 / 有害金属の吸着除去 / 染料の吸着除去 / 再資源化方法の開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては,研究課題「茶粕廃棄物の新規再資源化方法の開発および有害金属除去能の検討」の内,主に「有害金属除去能の検討」についての調査を昨年度に引き続き行なった。21種の茶葉(緑茶4種,紅茶6種,ハーブ茶2種,烏龍茶4種,健康茶5種)における,有害金属5種(カドミウム,鉛,クロム,ヒ素,水銀)およびイオン性の染料(アシッドオレンジ7,メチレンブルーおよびカヤクリル染料)に対する吸着性能を詳細に調査した。 これまでの検討結果より,有害金属イオンについてはカチオンである水銀イオン, 鉛イオン, カドミウムイオンに対する吸着能が高く,アニオンであるクロム酸イオンに対しても一定程度の吸着能を示したが,アニオンであるヒ酸イオンや亜ヒ酸イオンにはほとんど吸着能を示さなかった。また,染料においては,メチレンブルーを始めとするカチオン染料(カヤクリル染料類)への吸着能が高く,アニオン染料であるアシッドオレンジ7には低いことが分かった。そのため,多くの茶粕廃棄物が持つ吸着性能はカチオン性の物質を対象とするものであり,金属種や分子サイズの影響を受けにくい性質があることが示唆された。これは茶粕廃棄物の有害物質との吸着における吸着機構を解析する上で非常に重要な知見となる。また,温度やpH,飽和吸着量,反応速度などの調査実験から,基本的な吸着パラメータを評価しており,詳細な機構解析を進めている。さらに,走査電子顕微鏡による表面構造解析や比表面積,表面官能基情報などの物性についても調査しており,これらとの関連性も評価する予定である。 本研究課題の最終年度となる次年度では,新規再資源化方法の鍵となる腐敗活性の抑制作用などを調査することで実用化を志向した知見を得るとともに,研究結果を国際雑誌に報告することを目的としている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況としては,昨年に引き続きおおむね順調に進展している。当初の想定では,9種類の茶粕廃棄物を用いた検討から研究デザインを組み立てていたが,茶粕廃棄物による吸着除去による除染現象を詳細に解析するために,21種類の茶粕廃棄物で調査したことが,より多角的な知見を得ることにつながっている。また,その結果から詳細な吸着機構の解析を行うことが可能となった。 最終年度の課題として,実用化を志向した調査および研究結果の公表(学会発表および論文投稿)を設定しており,本研究課題の設定期間である3年間に対する進捗として,順調な進展状況である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については,これまでの実績および進捗を踏まえた計画通りに検討をすすめることである。具体的な検討課題および実施項目としては,吸着機構の詳細な解析および実用化を志向した調査項目(乾燥工程を要しない保存条件の検討や腐敗速度および腐敗活性の抑制因子の探索)の実施,研究結果のまとめと公表(学会および論文報告)である。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として,近年の新型コロナ感染症の影響により,研究,事務処理手続き,納品日程等に断続的な中断が生じたことが挙げられる。次年度が最終年度であることも鑑み,未使用額が発生しないように,必要資材および必要経費に使用する。
|