2020 Fiscal Year Research-status Report
農作物依存がニホンジカの成長と繁殖に与える影響および依存個体の分布傾向の解明
Project/Area Number |
19K20492
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
秦 彩夏 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 研究員 (30781695)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ニホンジカ / 安定同位体 / 農作物 / 個体群動態 / 空間分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ニホンジカは個体数の増加とそれに伴う農業被害の増加が問題となっている。農作物はシカにとって好適な餌資源であり、個体数の増加を促進する可能性が指摘されてきた。しかし、農作物の採食がシカの身体にどのような影響を与え、個体数増加に至るかは分かっていない。また、個体数の増加や農業被害の低減を図るためには、農作物に採食依存するシカ個体の捕獲等の管理が有効であると考えられるが、農作物依存個体がどのような場所に分布するかは不明である。そこで本研究では、(1)農作物への依存がシカの体サイズや妊娠率に与える影響および、(2)農作物に依存するシカ個体の空間分布傾向の解明を目的とした。 今年度は、(1)を検討するために、対象調査地内で捕獲されたメスの野生ニホンジカの農作物依存度と体サイズおよび繁殖に関するデータを用いて解析を行った。その結果、窒素安定同位体比が農作物依存度の指標として有用であることが示唆されるとともに、4歳以下の若齢個体では、骨コラーゲン窒素安定同位体比が高い個体ほど体サイズが大きくなり、その結果妊娠率も高くなる傾向がみられた。得られた結果を論文として取りまとめて国際誌に投稿し受理・掲載された。また研究に用いるシカ試料の収集過程で1頭の奇形胎仔を発見したため、ニホンジカにおける初の先天性奇形胎仔として国内英文誌に短報を投稿し、受理・掲載された。続いて、(2)を検討するために、捕獲されたシカ個体の捕獲位置情報と農作物依存度のデータをもとに、農作物依存個体の分布傾向について解析を行った。その結果、冬から春にかけて農地に近接して分布するメス個体は農作物依存度が高い傾向にあり、農作物依存可能性は農地から約10km離れると半減することが分かった。一方オスでは明瞭な傾向は見られなかった。得られた結果を論文として取りまとめ、現在国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的としていた解析を完了し、得られた成果の一部を論文化した。同様に得られた他の成果についても論文投稿中であり、当初の計画通り本研究は順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
体組織の部位によって保持される食性履歴の期間は異なることから、異なる体組織の安定同位体比に着目することで、同一個体の様々な期間の農作物依存度を把握できる可能性がある。そのため今年度は、骨コラーゲン以外の体組織を用いた検討を行い、様々な期間の農作物依存度を調べることで、農作物依存個体のより詳細な動態把握に努め、分布予測等の精度向上を図る。得られた成果は、国内外の学会や学術雑誌等で積極的に発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大により当初参加を予定していた学会等が無くなったため、旅費の支出が無くなり次年度使用額が生じた。 次年度助成金と合わせて、オンラインを含む学会参加費用、骨コラーゲン以外の体組織試料の安定同位体比分析に係る費用および論文投稿料等として使用予定である。
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Remarks |
プレスリリース
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Agricultural crop consumption induces precocious maturity in deer by improving physical and reproductive performance2021
Author(s)
Ayaka Hata, Rumiko Nakashita, Tomoko Anezaki, Masato Minami, Yuko Fukue, Naoko Higuchi, Hikaru Uno, Yasuhiro Nakajima, Midori Saeki, Chinatsu Kozakai, Mayura B Takada
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Journal Title
Ecosphere
Volume: 12
Pages: 1-13
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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