2022 Fiscal Year Research-status Report
Influence of Migration and Change of Cacao Production Base in Asia and Africa
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19K20557
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂梨 健太 京都大学, 農学研究科, 准教授 (90749128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | カカオ生産 / 熱帯地域 / 労働問題 / 非木材林産物 / 都市と農村 / 交通 / 資本主義 / 国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際狩猟採集民学会(CHAGS13)にて、熱帯アフリカでなされるカカオ生産における「負債」の意味について、理論的な検討を加えて、報告をおこなった。実際に海外調査に行けなかった代わりに、オンラインでの現況の聞き取りや取り寄せた資料をもとに、これまでの調査で見過ごしていた「負債」に焦点をあてて、カカオの生産がいかにまわっているのかを明らかにした。年度末には、『アフリカから農を問いなおす』(京都大学学術出版会)の一つの章を分担執筆した。本研究のテーマであるカカオ生産の変遷の背景を説明するために、熱帯アフリカの農業の特徴である多生業と複合性の視点から論じた。具体的にカメルーン南部で暮らすバンツー系の「農耕民」と呼ばれるファンを対象に、次の3つの視点、1)異なる生業の相互補完性、2)融通無碍、3)人間関係から、多生業の特徴をよりポジティブかつ動態的に示した。各世帯、各個人で農業と狩猟採集活動が主生業として常におこなわれているわけではない。それぞれのライフステージや経済状況によっては、カカオ生産が放棄されて新たな活動が取り組まれることもある。カカオ生産を含めた農業が生計維持のための「この道一筋」の活動にはならない。この背景には、いざとなれば助けてもらえる人間関係や何か手に入る森への信頼が存在しているからである。この点に、必ずしもネガティブな意味で、カカオ生産の拠点が消えていたり、変わっていたりするわけではないことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は海外調査を主とするものだが、2022年度は国際学会の報告を優先したことで、十分な調査ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は海外調査を計画しているが、学務や他の研究プロジェクトの兼ね合いで、長期滞在は見込めない。カカオ生産地の変化、生産拠点の変容に関しては、資料収集とその分析によって不十分な部分を補っていく予定である。また、生産の視点だけでなく、需要側つまりチョコレートの消費側の政治経済的な影響、歴史的な関わりについて見ていくことで、現地調査によって得られるデータのみに頼らない研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究期間の延長を申請したためである。来年度に海外調査などをおこない使用する。
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Research Products
(3 results)