2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K20627
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
土山 玄 お茶の水女子大学, 文理融合 AI・データサイエンスセンター, 特任講師 (00755390)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 計量文献学 / テキストマイニング / デジタルヒューマニティーズ / 文化情報学 / 源氏物語 |
Outline of Annual Research Achievements |
『源氏物語』は平安時代に成立した現存最古に類する長編物語であり、各時代を通じて広く読み継がれており、また研究されてきた。本研究では『源氏物語』のテキストデータに対して、テキストマイニングの手法を用い計量的な観点から分析を行った。なお、本研究で用いるテキストデータは青表紙本系の大島本が底本となっている。 『源氏物語』の諸巻は現行の巻序とは異なる順序で成立したという見解が以前から提起されている。そこで、本研究では諸巻の成立順序を推定することを目的に計量的な分析を行った。その結果、部ごとに単語の出現率などの形式的な文体的特徴の出現傾向が異なることを明らかにした。『源氏物語』の54巻は三部で構成されるという指摘があり、このうち第二部の計量的な特徴について検討を加えた研究成果が情報処理学会じんもんこん2020論文集に掲載された。 また、『源氏物語』の作者は1人ではなく、複数いたのではないかという指摘、すなわち他作者説がある。これについても計量的な観点から分析を行った。その結果、計量的な判断に基づけば、『源氏物語』において論じられる他作者説を積極的に支持する根拠は認められなかった。これについて、令和2年度の国際学会において発表する予定であったが、コロナ禍により延期されたため、令和3年に発表する予定である。 この他に令和2年度までの研究成果が『文学と言語コーパスのマイニング』(岩波書店)として令和3年6月に刊行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度から続くコロナ禍のため、令和2年度の4月および5月にお茶の水女子大学が原則的に入構禁止となった。また、この他に学会や研究会が中止や延期された。これらの要因により、少なからず研究の進捗に影響を与えた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで『源氏物語』のテキストデータを対象に代表的な多変量解析の手法を用いて、『源氏物語』の諸巻の成立順序に検討を加えてきた。今後は、まず、令和2年度までに行った研究成果を論文として発表する予定である。また、『源氏物語』の諸巻の成立順序を計量的な観点から検討する上で、ランダムフォレストなどの有効となりえる機械学習の手法もあるため、機械学習の手法を研究に取り入れ、さらに研究を進めることを考えている。 令和3年は最終年度であるため、これまでの研究成果をまとめ、計量的な観点による『源氏物語』の諸巻の成立順序を解明する。
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Causes of Carryover |
昨年度からのコロナ禍のため、参加を予定していた国内での学会および研究会などが中止あるいは延期となり、また発表予定であった国際学会が令和3年度に延期となった。そのため、旅費の支出がなくなり、この分が次年度への繰り越しとなった。 次年度は繰り越しとなった分を本研究に関連する書籍の購入および論文の投稿に伴う業者による英文校正の費用として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)