2019 Fiscal Year Research-status Report
公共図書館におけるマイノリティ向けサービスの提供実態とその要因に関する研究
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19K20632
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
水沼 友宏 駿河台大学, メディア情報学部, 助教 (20822688)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 公共図書館 / マイノリティサービス |
Outline of Annual Research Achievements |
公共図書館におけるマイノリティ向けサービスの提供実態を明らかにする一環として,性的マイノリティに関する書籍を公共図書館がどの程度所蔵しているかを調査した。具体的には,公共図書館3,085館を対象に,性的マイノリティに関する書籍433冊の所蔵調査を行った。この調査結果をもとに,性的マイノリティに関する書籍に関して,どのような特性を持つ書籍が所蔵されやすいかや,どのような公共図書館が当該書籍を所蔵しやすいかを分析した。結果,書籍の出版年や価格,人気度(検索エンジンのヒット件数を人気度とした)は所蔵状況にほとんど影響しないことや,児童向けの書籍や小説は他の種類の書籍に比べ所蔵されやすいことが分かった。また,同性パートナーシップ証明制度を導入した自治体の公共図書館は同制度を導入していない自治体の公共図書館に比べ,性的マイノリティに関する書籍を所蔵しやすい傾向も明らかになった。一方で,同制度導入を計画している自治体の図書館においては,検討していない図書館よりもそのような書籍を所蔵しやすいとは言えないことも分かった。 加えて,米国の図書館を対象とした調査ではあるが,YouTubeにおいてどのようなサービスが提供されているかを調査したところ,手話による動画の配信や,英語以外の言語を用いた動画の配信など,いくつかのマイノリティサービスが提供されている実態が明らかになった。また,そのような動画は他の動画に比べ視聴回数が多くなることも示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に記した通り,公共図書館によって他言語や手話による動画の配信という形でマイノリティ向けサービスが提供されている実態が明らかになった。この結果は,QQML Journalに掲載された。また,性的マイノリティに関する書籍の所蔵調査によって,どのような書籍が所蔵されやすいかや,どのような図書館がそのような書籍を所蔵しやすいかが明らかになった。その成果は,国際会議 A-LIEP 2019に採択され,昨年度11月にマレーシアで発表を行った。これらにより,研究課題である「公共図書館におけるマイノリティ向けサービスの提供実態とその要因」が,部分的ではあるが,明らかにされたと考えられる。したがって,研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,性的マイノリティ向けのサービスについて調査を深めるとともに,他のマイノリティに対する所蔵調査も実施していく。前者としては,今年度行った調査の経年的な調査(同性パートナーシップ制度導入前後の変化など)の実施とともに,性的マイノリティに関する書籍を積極的に提供している図書館へのインタビュー調査なども検討している。後者については,言語的・民族的マイノリティに対するサービスや障害者サービスに関する所蔵調査の実施を検討している。
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Research Products
(2 results)