2020 Fiscal Year Research-status Report
情報社会における監視と信頼に関するオンライン実験研究:創造・毀損・回復過程の解明
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19K20634
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
後藤 晶 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任講師 (80707886)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 監視 / オンライン実験 / クラウドソーシング / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究計画においては,カタストロフが利他行動・信頼行動に与える影響,および信頼の破壊過程の解明を目的とした実験を行う計画であった.しかしながら,世界中で猛威を奮い続けているコロナ禍の影響により,同一の目的のもと,一部の研究計画を変更しながら進行した.具体的には,ラボ実験を中止した上で,クラウドソーシング実験のみを実施した.また,研究内容としても当初予定の実験は予備実験までの実施となったものの,コロナ禍を受けて,2019年度に実施した「市民・国民が監視主体・監視媒体に対して抱く意図に対する信頼の現状の把握,および創造過程の解明」を目的とする調査を2020年度にもパネル調査として引き続き調査を実施した.特筆すべき点として,コロナウイルスに関する健康情報については監視を許容するという点である.またこの調査結果を精査することで,我々の監視意識に対してコロナ禍という一種のカタストロフがどのような影響を与えたのか解明できると考えられる. 研究業績としては2020年度にはクラウドソーシング実験による査読付き論文が1件(共著)の掲載および,その他3件(単著2件,共著1件)が掲載決定となるなど,一定程度の成果を上げることができたと言える. 2021年度については当初より3年目の研究として計画していた,監視主体が意図せずに監視に関わる情報を流出してしまう「監視主体に発生するカタストロフ」,監視媒体が監視に関わる情報を意図せずに流出してしまう「監視媒体に発生するカタストロフ」に着目した「情報社会における監視主体・監視媒体に生じたカタストロフが信頼行動に与える影響」に加えて,コロナ禍であっても研究を止めないための手法の一つとして「オンライン実験手法の公開」の2軸を中心に研究を推進することとする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の研究計画においては,カタストロフが利他行動・信頼行動に与える影響,および信頼の破壊過程の解明を目的として,獲得額を繰越可能な繰り返し公共財ゲームとリアル・エフォート・タスクによる実験を行い,獲得したポイントが実験参加者の意図によらずに変動するカタストロフゲームとして実施した上でTG/DG実験を行う計画であった.しかしながら,世界中で猛威を奮い続けているコロナ禍の影響により,同一の目的のもと,一部の研究計画を変更しながら進行することとした.具体的には,ラボ実験を中止した上で,クラウドソーシング実験のみを実施した.本研究はクラウドソーシング実験を中心に展開する計画であったために,大きな計画の変更もせずに順調にすすめることができたと言える.また,研究内容としても当初予定の実験は予備実験までの実施となったものの,コロナ禍を受けて,2019年度に実施した「市民・国民が監視主体・監視媒体に対して抱く意図に対する信頼の現状の把握,および創造過程の解明」を目的とする調査を2020年度にもパネル調査として引き続き調査を実施した.特筆すべき点として,コロナウイルスに関する健康情報については監視を許容するという点である.またこの調査結果を精査することで,我々の監視意識に対してコロナ禍という一種のカタストロフがどのような影響を与えたのか解明できると考えられる. また,研究業績としては2020年度にはクラウドソーシング実験による査読付き論文が1件(共著)の掲載および,その他3件(単著2件,共著1件)が掲載決定となるなど,一定程度の成果を上げることができたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の軸として2軸を設定する. 1つは,当初より3年目の研究として計画していた「情報社会における監視主体・監視媒体に生じたカタストロフが信頼行動に与える影響」の解明である. 一連の信頼の創造・破壊・回復過程の解明を目的として,信頼関係を変化させる不確実な事象としてのカタストロフに着目したクラウドソーシング実験を実施する.カタストロフとは突然生じるネガティブな事象であり,能力に対する信頼の毀損をもたらす.本研究では監視主体が意図せずに監視に関わる情報を流出してしまう「監視主体に発生するカタストロフ」,監視媒体が監視に関わる情報を意図せずに流出してしまう「監視媒体に発生するカタストロフ」に着目する.いずれの事態も監視対象による監視主体および監視媒体に対する信頼の低減が想定されるが,問題はカタストロフが発生していない監視主体・監視媒体に対しても不信感が波及し得る点にある.さらに,監視主体や監視媒体の両者にカタストロフが発生した場合の行動推移や,信頼回復を促進するメカニズムの可能性を検討するために処罰・報奨等のサンクションメカニズムの有用性についても検証を行う. もう1つは「オンライン実験手法の公開」である.コロナ禍であっても研究を止めないための手法の一つとして「オンライン実験」は重要である.本研究がターゲットとするようなインタラクションのある経済ゲーム実験については,その構造の複雑性から実験の実施が容易ではないが,適切な実験プログラムを利用すれば,容易に実験を構築することが可能である.そのために,現在実験用プログラムとして利用しているoTreeについて,オンライン実験で用いたプログラムを公開すると同時に,マニュアルなど実験に関わる手法・ツールなどを公開することで,研究の透明性を確保すると同時に,国内におけるインタラクションのある経済実験研究を推進することを目的とする.
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Causes of Carryover |
当初予定していた出張がコロナ禍により実施できなかったため,計画変更が生じた.コロナ禍の状況によるが,2021年度の出張旅費としてあてる予定である. ただし,社会の状況に応じて改めて検討する必要があると考えている.
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