2019 Fiscal Year Research-status Report
Building a communication model for resilient disaster management
Project/Area Number |
19K20635
|
Research Institution | International University of Japan |
Principal Investigator |
細島 美穂子 (櫻井美穂子) 国際大学, GLOCOM, 准教授(移行) (80626979)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 災害対応 / コミュニケーション / 自治体 / ICT / レジリエント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自治体の避難所業務において、Resilient な災害対応を達成するコミュニケーション構造を明らかにすることである。具体的には、①自治体が協力すべき外部組織の定義、②情報共有フォーマットの標準化に向けた分析、③情報共有のためのコミュニケーション手段の考察――の 3つの観点から、自治体および関連組織間のコミュニケーション、そこにおける情報マネジメントを分析する。 次の自治体からの協力を得て、上記問題意識に関する研究会を計6回開催した。 【室蘭市、仙台市、登米市、常総市、調布市、千葉市、藤沢市、南魚沼市、東白川村、丹波市、神戸市、西宮市、高知市、玄海町、熊本市】 上記自治体から西宮市、熊本市、常総市の3市町に加え、鎌倉市長をお招きして、2020年1月末にパネルディスカッション形式の「全国自治体ICTサミット」を開催した。 自治体職員や首長との協働による実践研究に加え、本研究ではInformation ecology 概念に基づいたコミュニケーションモデルの分析を行った。目的は、同概念に基づき申請者が過去に発表した日本とネパールの比較事例研究で得られた知見の発展を目指すことである。”Collaboration in Disaster”、 “Communication in Disaster”、そして “Institutional Role in Disaster”の3つのキーワードに基づいたLiterature Reviewを行い、Resilient Communication Ecosystemのモデル構築を行った。さらに、2019年10月に関東を襲った台風19号時のコミュニケーションがどのように行われていたのかに関し、モデルに基づいて、Twitter上でやりとりのあった情報を分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
災害時のレジリエントなコミュニケーションモデルに関して、基礎自治体の視点から今後解決が必要な共通課題を整理したところ、次の点が明らかとなった。
情報収集・(迅速な)整理力不足/各組織がばらばらに情報を収集および管理しているため、基礎自治体において情報収集を効率的に行えていない。庁内の情報共有にも課題あり/基礎自治体が収集した情報を都道府県や国と共有する情報連携の仕組みがない。国―都道府県―基礎自治体の役割分担が不明瞭/住民からの問い合わせや、寄せられた情報を整理する際の人的リソースが足りない/住民ニーズにあった情報発信ができていない/避難行動が差し迫っている住人や、その支援者に対するきめこまかい情報発信ができていない/発信情報の多言語化と、その情報を該当者にどのように届けるか整理できていない/ITリテラシーやデバイス整備、日ごろ使いに課題あり/庁内のITリテラシーが社会のスピードに追い付いていかない/業務用モバイルデバイス(スマートフォンなど)が十分に行き届いていない/日ごろ使っていないツールは災害時に使えない。災害時利用を見据えた平時の情報連携や情報収集・発信に課題。
Resilient Communication Ecosystemについては、災害時の情報伝達を可能とする主要なステークホルダーを、①Remote Actors, ②Responsible Agents, ③Transmittersの3つのカテゴリに整理した。①は、気象庁など、災害のリスクに関する情報を発信する主体である。②は、Remote Actorsが発信したリスク情報を基に命を守るための情報を発信する組織(自治体など)。③は、Remote ActorsやResponsible Agentsの発信情報を必要なターゲット(市民)に届ける役割を果たすメディアなどである。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度まとめた自治体に共通する課題の解決策のために、次の点に着目した研究を行う。 ①「災害支援・受援のための情報共有リファレンス/参照モデル(仮称)」の作成――基礎自治体と関係ステークホルダーにおいて、災害対応のために共有が必要な情報について考察する。具体的には、情報の大項目、小項目、情報の保有元、情報の確認方法などを構造化する。どの組織がどのような情報を保有しているのか、どの組織が何の情報を欲しているのかなど。首長の意思決定に資する情報のトリアージを実現するための庁内情報共有の在り方について考察する。 ②「パーソナル情報とローカル情報の組み合わせによる住民意識の向上と危険エリアへの個別情報伝達」に関する共通ガイドライン(仮称)作成――基礎自治体が保有するエリア情報―浸水想定の規模、土砂災害想定区域、建築物の構造・規模等の属性―を基に、パーソナル情報―要援護者名簿、住民記録―から避難すべき家屋の優先順位付けを行い、対象世帯に避難行動を促すための事前啓発(意識づけ)のあり方について考察する。地域における伝承や過去の雨量情報、リアルタイム気象データの活用による、危険エリアに対する個別の情報伝達についても考察する。 上記の内容は、書籍「Emerging technologies and Disaster Resilience」の一章として執筆予定。 Resilient Communication Ecosystemについては、論文を投稿することに加え、台風19号以外の災害についてモデルの適用を目指す。
|
Causes of Carryover |
2020年3月に参加予定であった学会(情報処理学会)が、コロナウイルスの影響で遠隔開催となったため、旅費の発生がなくなった。
|
Research Products
(1 results)