2018 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国の文芸一家――王嘯平、茹志鵑、王安憶の文学テクストの総合的検討
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18H05582
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
松村 志乃 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (40812756)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 中国当代文学 / 馬華文学 / 王嘯平 / 茹志鵑 / 王安憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はシンガポール華人の王嘯平(1919‐2003)と、その妻茹志鵑(1925‐98)、娘王安憶(1954‐)という文学者一家の文学テクストを、ひとつの「知」の総体として総合的に検討し、中華人民共和国建国から今日に至る中国の社会と文化を考察しようとするものである。
2018年度は、まず王嘯平テクストの全貌と背景の検討を行った。現地シンガポールを訪れ、シンガポール国家図書館で資料調査を行った他、王嘯平のシンガポール寓居を訪れた。さらに、現地の中国語書店を訪れ、書店経営者に現在のシンガポールにおける中国語文学の状況を聞く機会を得た。ただし図書館の都合で全ての資料を得るに至らなかった。また自伝的小説の最終巻『和平歳月』が中国国内でほとんど流通されておらず入手できていない。今後も資料収集を続けながら、シンガポールマレーシア華人文学に関する先行研究を確認し、王嘯平論としてまとめてゆく所存である。
一方王嘯平、茹志鵑、王安憶の文学テクストを双方向的に読み解き応答関係を検討する研究に関しては、茹志鵑、王安憶の文学テクストにおける王嘯平像を検討するという内容の口頭発表を中国語で行った。直接的表現では綴られていない王嘯平像を読みとく作業は、いくらかの推測を含む。そこで中国の研究者がいかにうけとめるかを確認するために、中国語での口頭報告を行った次第である。幸い報告が好評をもって受け止められたことから、上記の推測について確証を得るようになった。現在この研究は論文を鋭意執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
王嘯平を含む文芸一家を検討する論文執筆が予定よりやや遅れてはいるものの、全体的にはおおむね順調に研究が進んでいる。 論文執筆が遅れている理由は、同内容について、中国語での口頭報告の機会を得たので、論文執筆より中国語口頭発表を優先させたことことがあげられる。またシンガポールに調査出張を行ったが、入手困難な資料があったことも予想外であった。加えて、昨年度は本研究課題と関連する、中華人民共和国建国以後の上海における都市と文学に関する口頭報告の依頼を複数回受けたことも、論文執筆が遅れる原因となった。しかしながら総体的に見ると、いずれも研究の深化のために有益なものであり、研究自体はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の通り研究を進める所存である。 まず、王安憶、茹志鵑文学における王嘯平像についての論文を執筆のうえ、論文集に投稿する。 さらに再度シンガポールを訪れ資料調査を行う他、可能であればシンガポール大学へ赴き1930年代末の新聞資料を調査するほか、「マレーシア華人文学」研究者と交流を図る。なお、中国国内でも日本でもシンガポールでも入手できない資料について、台湾大学図書館に所蔵されていることが確認できたため、現在複写依頼中である。 上記の資料が届きしだい、王嘯平論として口頭発表の上、論文を執筆、投稿する。可能であれば、日本のみならず中国語圏でも口頭発表を行い、意見を伺いたいと考えている。
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