2018 Fiscal Year Annual Research Report
保育の質という社会的枠組みの生成過程-農村保育所における標準化と異質化に着目して
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18H05642
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Obihiro Ohtani Junior College |
Principal Investigator |
茶谷 智之 帯広大谷短期大学, その他部局等, 助教 (20824808)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 保育の質 / 農村保育所 / 社会関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国際比較の視点を取り入れながら、北海道の農村保育所改革に関わった関係者が保育の質として何を大切に考えてきたのかを明らかにすることを目指している。 上記の目的を達成するために、2018年10月から12月にかけては主に文献調査及び農村保育所改革にかかる資料分析を行った。前者の文献調査を通して、保育の質を一定の数値基準に基づき捉えるのではなく、子ども同士や保育者との相互作用に着目する視座を得ることができた。その視座をもとに執筆した論文を『自然保育学研究』に投稿し、掲載されることが決定した。一方、後者の資料分析を通して、町長、子育て支援課職員、保育士、畑作農家、酪農家、農協青年部、保護者など、改革過程の議論に参加する複数の関係者を抽出することができた。そのなかで集団保育の重要性や農村保育所の統廃合に伴う登園負担が主な論点となったことが明らかとなった。 また2019年1月から3月にかけて、農村保育所改革に伴い新設された公立保育所にて集中的なフィールドワークを実施した。当保育所の3歳児クラス及び5歳児クラスにて参与観察及びインタビュー調査を実施し、農村保育所改革前後の変化について詳細なデータを収集した。それを通して、農村保育所改革前後において保育士の子どもに対する言葉かけ、保護者との関わり方、保育内容に大きな変化があることが明らかとなった。さらに2月下旬にはペンシルベニア大学教育学大学院で開催されたEthnography in Education Research Forumに参加し、近年の教育をめぐる民族誌的調査の動向を把握することができた。これらに加えて、調査地での長期滞在を通して、調査地の子育て環境、地域経済、産業、町行政、医療などの民族誌的データの収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の主な課題として、農村保育所改革にかかる資料分析と関係者へのインタビュー調査を挙げた。前者に関しては、農村保育所改革にかかる行政文書・資料の収集・分析を行い、改革に関わる重要な関係者の抽出が完了している。また、文献調査及び国際学会への参加を通して、国際比較を行い、日本の農村保育所改革を国際的な文脈に位置づける視座を得ることができた。後者に関しては、農村保育所改革を通して新たに設置された公立保育所の関係者を中心にインタビュー調査を実施した。加えて、当保育所において参与観察を実施した。それを通して、農村保育所改革前後の保育内容の変化などに関して多くのデータを収集することに成功した。以上の理由から、本研究課題への取り組みは、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記のフィールドワークで得た知見をまとめた上で国内外の学会での発表を計画している。そこで得たコメントをもとに年度内に論文執筆を目指している。そのためには、資料分析で明らかになった関係者のうち、インタビューを実施できていない方への調査を随時進めていく予定である。特に地域住民からの聞き取りが十分に進んでいないため、重点的に調査を行う予定である。加えて、日本の農村保育所の特徴を国際比較の観点から明確化するために、農村部における世界最大規模の保育事業を実施しているインドに関する調査も同時に行っていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)