2018 Fiscal Year Annual Research Report
選択性緘黙の対人関係形成を支援する教材・玩具に関する調査研究
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18H05743
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
奥村 真衣子 信州大学, 学術研究院教育学系, 助教 (60824919)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 選択性緘黙 / 玩具 / 北米 / 英国 / 系統的分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、選択性緘黙児が負荷なく他児と交流することを助けるツールとして、教材や玩具に着目した。教材や玩具の使用は専門的技術に依存しないため、教師や保護者など専門家以外でも活用可能なことが期待される。選択性緘黙の研究先進国である北米や英国において使用されている教材や玩具を調査することで、わが国の実態に応じた活用方法を検討することを目的とし、初年度は主に玩具に焦点を当て、下記の要領で実施した。 [方法] アメリカ、カナダ、イギリスにおける支援ガイド等の出版物、研究機関や支援機関のホームページ等を用いて、支援ツールの情報収集をした。さらに、Web上で“selective mutism”“toy”“tool”によるキーワード検索を行い、他機関による情報がないか調査した。上記の情報収集に基づき、玩具を取り寄せ、以下の観点から、系統的に分類・整理を行った。1)玩具の形態、2)使用時の発話形式、3)発話対象、4)使用人数、5)対象年齢 [結果] 取り寄せることのできた玩具について、上記観点より整理した結果、1)形態としては、カードやボードゲームのほか、音声に反応するロボットや録音・再生機器があった。2)使用の際の発話形式は、ものの呼名や「はい/いいえ」での応答、定型表現による質問などの“型のあるもの”と、自分の考えが反映される“創造的なもの”とに大別された。3)発話対象は人、玩具自体(モノ)に大別された。4)使用人数は単独使用から6人程度のものまであり、5)対象年齢は幼児年齢から使用可能なものが多く、中学年齢以降に推奨されるものも少ないながら存在した。 本調査の分類は、専門家以外が玩具の使用選定をする際の有益な情報になり得る。治療原則の安心できる人から徐々に人数を増やす、発話は自分の意思が反映されないものから始めるに則れば、「対モノ」で「型のある発話内容」がより易しいことが導き出される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に述べられている実施課題の1)教材研究、2)教育現場への導入のうち、前者について、計画した手続きに基づき実施できている。アメリカ、カナダ、イギリスにおける支援ツールの情報収集ののち、主に玩具を中心に複数観点(玩具の形態、使用時の発話形式、発話対象、使用人数、対象年齢)による系統的分類を行った。その結果、各々の玩具の特徴が明確になり、選択性緘黙児の状態に応じた教材選定に役立つ可能性が見えてきた。 2年目は、これら玩具の学校等の教育場面における導入と効果について検討していく必要がある。7月には幼稚園・小学校・中学校等の教員を対象に、学校現場への適用可能性について調査を実施する。実際に調査で得られた玩具を使用してもらい、授業や休み時間等における導入のしやすさ、導入できそうな教科・活動について評価をしてもらう予定である。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画調書に述べられている実施課題の1)教材研究、2)教育現場への導入のうち、後者について進めていく。当初は、2)教育現場への導入について、新しい環境で新たな関係性を構築する時期を想定し、小学校低学年の選択性緘黙児が在籍する学級を対象に、教材や玩具を導入した授業や遊びを実施し、その効果を評価する計画であった。しかし、1)教材研究を進める過程で、児童への介入以前に、まずは授業実施者である教員に対して実用可能性を問うことが優先と考えるに至った。そこで、実際に学校現場の教員に教材や玩具を使用してもらい、授業や休み時間等における導入のしやすさや、導入できる場合の教科・活動について検討を行う。 また、研究経過の報告として、学会発表原稿の執筆および日本臨床発達心理士会第15回全国大会(2019年9月)において発表を行う。
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