2018 Fiscal Year Annual Research Report
4次元多様体のシャドウとファイバー構造に関する研究
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18H05827
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
直江 央寛 東北大学, 理学研究科, 助教 (10823255)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | トポロジー / 4次元多様体 / シャドウ / ファイバー束 / シャドウ複雑度 / 微分構造 / 結び目 |
Outline of Annual Research Achievements |
シャドウとは4次元多様体に局所平坦に埋め込まれた2次元多面体であり,4次元多様体の一種の組み合わせ的な表示を与える.シャドウには真頂点と呼ばれる特別な頂点が存在し,その個数の最小値としてシャドウ複雑度と呼ばれる4次元多様体の不変量が定義される.本研究課題では,シャドウを用いた4次元多様体のファイバー束の研究,そしてシャドウ複雑度を用いた4次元多様体の分類・特徴づけを目的としている. 今年度は,石川昌治氏との共同研究において,ディバイドに対するシャドウの構成法,そしてシャドウ上の LF 構造として4次元多様体に入る Lefschetz 束の構造を定式化した.今回の研究により,ディバイドから得られる Lefschetz 束の構造が詳しく記述され,とくに,ファイバー曲面が4次元多様体にどのように埋め込まれているかをより正確に捉えることが可能となった. また,古宇田悠哉氏との共同研究では,境界が3次元球面であるような非輪状4次元2ハンドル体は4次元球体と微分同相であるか,という問題を考え,連結シャドウ複雑度が2以下の場合で肯定的な答えを得ることができた.この問題は可微分 Poincare 予想にも直結する重要な問題である.証明では,まずコンピュータを用いて真頂点をちょうど2個持つような多面体のリストアップを行った.そして多面体の表示から対応する4次元多様体のハンドル体図式を復元し,Kirby 計算と3次元多様体の Dehn 手術に関する性質を駆使し4次元多様体の微分構造の決定を行った. さらに,福田瑞季氏とともに曲面結び目のシャドウ表示や Gluck 捻りによるシャドウの変化に関しても研究を進めた.この課題については今後とも精査を行いつつ,シャドウ複雑度を絡めて研究を進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディバイドとシャドウの研究では,LF 構造を定式化したことで,応用として自由ディバイドと呼ばれるディバイドの一種の一般化に対してファイバー束の構造を見出すことができた.これは研究を始めた当初には予期していなかったことである.また,非輪状4次元2ハンドル体の微分構造に関する研究では,シャドウ複雑度2以下という条件で証明を試みていたが,一般的な状況設定で補題が用意できたため,その帰結として連結シャドウ複雑度2以下という当初より広い4次元多様体のクラスに対して証明を与えることができた.また,曲面結び目のシャドウの研究はディバイドから着想が得られており,この1年で満足のいく研究の進展があったと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
LF 構造の考えをもとに,より広く4次元多様体のファイバー束の構造をシャドウから捉える.具体例の構成については,ディバイドの場合に行ったようにファイバー曲面がシャドウに埋め込まれているような状況を想定している.また,単純特異レフシェッツ束やトライセクションの表示から定まる4次元多様体のシャドウ複雑度についても考察を進めていきたい.さらに,シャドウ複雑度による2次元結び目の特徴づけについても研究を行う.Gluck 捻りについては,シャドウの変化をグリームで調整することは可能か,そしてその条件がどのように述べられるかについて考察を進めていく.
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Research Products
(7 results)