2018 Fiscal Year Annual Research Report
計算代数手法による正標数の特殊な代数曲線に関する研究
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18H05836
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
工藤 桃成 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (10824708)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 代数幾何学 / 正標数 / 代数曲線 / 超特別曲線 / 最大曲線 / Hasse-Witt行列 / 計算代数 / 数式処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の採択以前の研究成果として,種数4の非超楕円曲線の場合に,標数11以下の超特別曲線の(非)存在性と数え上げに関する結果を得ていた. これに対し2018年度の研究実績としては,曲線の種数と次数がある関係式を満たすとき,ある合同式を満たす全ての素数pに対して,標数pの完全体上の超特別曲線(および素体F_pの二次拡大体上の最大曲線)が存在することを示すと共に,その中で曲線の明示的な方程式を与えることにも成功した.特に,種数4,5の場合に上記の曲線が存在するような素数の密度はそれぞれ1/2,1/4であることを明らかにした.これらの結果をまとめた論文は,2019年3月に国際雑誌Communications in Algebraに掲載が受理された. また,原下秀士氏(横浜国立大学)との共同研究では,種数4の超楕円曲線の場合に結果を得た.具体的には,超特別曲線の数え上げ問題を計算問題に帰着させ,グレブナー基底などの計算代数手法を駆使することで,計算問題を解くためのアルゴリズムを提案した.アルゴリズムを計算機に実装・実行することで,標数19以下の任意有限体上,および標数23では素体の奇数次拡大体上で,超特別曲線を全て決定することに成功した.これらの結果をまとめた論文は査読付き国際会議WAIFI2018に採択されており,2018年12月にLNCS 11321に掲載された. また,種数5の場合にも,トリゴナルと呼ばれる曲線クラスについて,方程式の記述と簡約化,およびHasse-Witt行列の明示的公式などを与え,超特別曲線の小標数での数え上げに成功した.この結果について,査読付き国際会議MEGA2019にポスター発表が採択され,2019年6月に発表予定である. なお,これまでに得られた上記の計算結果は,データベースとして報告者のホームページに公開している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の採択以前の研究で得られていたのは,種数4の場合に小標数において標数(素数)を固定したときの網羅的計算結果であったのに対し,2018年度では曲線を固定し素数を大きくするという方向性の研究に新たに取り組み,合同式という条件付きではあるものの無限個の素数に対する超特別曲線・最大曲線の存在性の証明に成功した. さらに,種数4・超楕円曲線や種数5・トリゴナル曲線の場合における超特別曲線・最大曲線の数え上げ手法を整備した.これらは従来の研究手法(種数4・非超楕円曲線)の高種数や大きな標数への拡張、そして類似結果を得たことに相当する. 以上のように,種数・標数ともに既存結果より大きい場合において,新たな研究手法の提案と拡張,そして類似結果を得ることに成功しており,申請時の研究計画に記載した目標達成に向けて着実に研究が進展しているため,「おおむね順調に進展している」と評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究課題として,2018年度に得られた計算手法の改良(アルゴリズムの高速化)を行うことで,より大きな素数に対し結果が得られる見通しである.計算手法の改良においては,Hasse-Witt行列の計算が必須となるため,その計算手法の高速化や高種数への一般化にも取り組む. 種数5の場合については,トリゴナル曲線以外の曲線クラス(四次射影空間内の二次曲面三つの完全交叉,超楕円曲線)に対する計算手法の提案や,類似結果を得られないか考察することも考えられる. さらなる課題としては,代数曲線のモジュライにおいて超特別曲線の周辺を調べること,具体的には超特異曲線の(非)存在性などについて考察したい. これらの,種数5の場合の研究と超特異曲線の研究については,原下氏と共同で取り組む. その他の課題としては,得られた曲線クラスの暗号・符号分野への応用が考えられ,特に種数が小さい場合における超特別曲線間の同種写像を利用した暗号の構成または安全性評価を検討している.この応用研究については,安田雅哉氏(九州大学)らと共同で取り組むことを予定している.
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Remarks |
・上記webページのタイトルは,本入力システム上の文字数制限により,一部略記している. ・上記webページは,報告者が訪問研究員として所属する九州大学のサーバーを利用しているため,今後サーバー側の都合によってはURLが変更となる可能性がある.
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Research Products
(8 results)