2018 Fiscal Year Annual Research Report
Proterozoic atmospheric chemistry constrained by an Earth system model of intermediate complexity
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18H05874
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
尾崎 和海 東邦大学, 理学部, 講師 (10644411)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 原生代 / 大気中酸素濃度 / 大気中メタン濃度 / 大気中二酸化炭素濃度 / 生物地球化学 / 物質循環 / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大気中の酸素、二酸化炭素、およびメタンの濃度を規定する地球表層圏での主要生元素(C, N, P, O, S)循環を包括的に考慮した数値モデルを開発し、地質記録を制約条件とした統計手法と組み合わせることで、原生代の大気組成を制約し、その背後にある物質循環を解明することを目指す. 当該年度においては、まず全球酸化還元収支モデルの開発とモデル結果の検証作業を行った.そのうえで、地質記録に基づく海洋硫酸イオン濃度の制約と大気中酸素濃度の制約を課したモンテカルロシミュレーションを実施し、原生代中期の大気中メタン濃度の制約結果を得ることに成功した.その結果、(1)地質記録と整合的な海洋硫酸イオン濃度を実現するためには、当時の海洋一次生産が現在の25%程度と低くなければならないこと、(2)低生物生産のために海洋から大気へのメタンフラックスもそれほど大きくなく(~100 Tmol/yr)、大気中メタン濃度は~10-20 ppmv程度であったことなどが明らかとなった. 上記数値実験では、大気中酸素濃度は地質記録に基づく範囲の値で境界条件として与えられている.本研究では、次の課題として、海洋物質循環や大気光化学反応および陸域風化作用によって大気酸素濃度がモデル内で自律的に決定できる数値モデルの開発を進めた.モデル開発は順調に行われ、固体地球内部からの還元ガスの流入率を境界条件として大気中酸素やメタン濃度が求められることを確認した.一方、条件によっては全球酸化還元収支が成立するまでの数値積分に時間を要することが判明した.新規計算機の導入だけでなく、スキームの改良点についての検討を行う必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値モデルの開発は、順調に進展している.地質記録を制約条件とした大規模かつ系統的な実験がすでに行われ、大気中メタン濃度の制約を行うことに成功している.全球酸化還元収支モデルによる大気中酸素濃度を含めたモデル開発も行われ検証作業が済んでいるが、数値解法の安定性や計算コストの課題が見出されている.引き続きそれら課題に対する検討を進める.また、大気中二酸化炭素濃度を規定する物質循環モデルの導入作業にも着手しており、翌年度には達成可能な見込みである.以上のことから、全体としてはおおむね順調に進展しているものと判断する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は大気中メタン濃度に着目し、その制約を行った.翌年度は大気中酸素濃度についても考慮した全球酸化還元収支モデルを用いて、それらの制約を行う方針である.大気中酸素濃度を含めた計算については、計算コストのさらなる削減を目的としてスキームの検討を引き続き行っていく.また、炭素循環ー気候モデル(CANOPS気候システムモデル)との結合作業にも着手し、地球表層圏の主要生元素循環を包括的に議論可能な新たなモデル(CANOPS地球システムモデル)の構築を行う.結合作業には見通しが立っているが、こちらについてもモデルの検証作業と計算コスト削減を検討する.それらをクリアしたうえで、統計手法を適用した大規模数値実験によって、大気組成とその背後の物質循環を解明できるよう努力する.
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Research Products
(3 results)