2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K21055
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
尾崎 和海 東邦大学, 理学部, 講師 (10644411)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 原生代 / 大気中酸素濃度 / 大気中メタン濃度 / 大気中二酸化炭素濃度 / 生物地球化学 / 物質循環 / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,大気中の酸素,メタン,および二酸化炭素の濃度を規定する地球表層圏での主要生元素(C, N, P, O, S)循環を包括的に考慮した数値モデルを開発し,地質記録を制約条件とした統計手法と組み合わせることで,原生代の大気組成を制約し,その背後にある物質循環を解明することを目指すものである. 当該年度においては,昨年度に開発を行った全球酸化還元収支モデルCANOPSを改良する作業を行った.具体的には,従来の計算で境界条件として扱われていた大気中酸素濃度について,地球表層圏の酸化還元収支に応じて動的に計算できるように拡張する作業を行った.これにより,固体地球からの還元力フラックス(還元ガスの流入フラックス)の変化に対し,大気中酸素濃度が動的に応答する様子を計算できるようになった.現在の地球表層環境を模擬した標準実験を通して酸化還元収支やスキームの検証を行い,モデルが正常に動作していることを確認した. 開発された新規の全球酸化還元収支モデルに対し,地質記録に基づく海洋硫酸イオン濃度についての制約を課したモンテカルロシミュレーションを実施し,どのような大気組成(酸素およびメタン)が実現するかを調べた.その結果,顕生代レベルの大気中酸素濃度(現在の50%から150%)のほか,原生代レベル(現在の0.1%から数%)および太古代レベル(現在の10万分の1以下)に対応する3つの安定状態を取りうることが示された.大気中酸素濃度は,地球史を通じて段階的に上昇してきたことが知られているが,全球酸化還元収支に基づく数値モデルによって統一的に説明可能となったことは重要な進展である. また,上記モデルに炭素循環を結合する作業にも着手した.結合作業は順調に行われ,モデルの検証作業を行っている段階にある.すなわち,原生代の大気組成を包括的に制約可能な数値モデルの開発の最終段階まで到達した.
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Research Products
(14 results)