2018 Fiscal Year Annual Research Report
微量窒素同位体比分析を用いた山岳地域の温暖化に伴う森林の成長と種多様性の変化予測
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18H06017
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田中 あゆみ (小田あゆみ) 信州大学, 農学部, 助手 (40571609)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素同位体比 / 温暖化 / 山岳地域 / 窒素源 / 成長速度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題「微量窒素同位体比分析を用いた山岳地域の温暖化に伴う森林の成長と種多様性の変化予測」では、標高2000m以上の平均気温の異なる 3 調査地において、土壌中の窒素資源の存在形態と存在量および樹木種ごとの窒素源を明らかにしたうえで、過去 50 年間の成長速度データと照合し、温暖化により土壌中の窒素の存在形態が変化した場合に影響を受ける樹種をスクリーニングすることで、温暖化による山岳地域の森林構成樹種の成長変化予測を行うことを目的としている。本年度は標高2000、2200、2400mの既存試験地の下見をおこない、樹木葉の予備試料を採取した。一方で、試料乾燥や、抽出試料作成に必要な実験機器類が不足していたため、それらの設備の整備もおこなった。 本課題では、乾燥試料と土壌抽出液の2種類の試料について窒素同位体比を測定する必要がある。そのため、まず植物試料乾燥用の乾燥器を設置し、続いて抽出溶液作成用のRO水製造装置と振とう器についても新たに設置した。乾燥試料の同位体測定に使用予定である信州大学の松本キャンパスにある同位体比質量分析計について、測定メソッドを最適化し、来年度以降の分析に対応できるように準備した。また、土壌抽出液試料の窒素同位体比測定は脱窒菌法という特殊な手法を用いるため、日本では京都大学生態学研究センターが唯一の測定拠点である。申請者は脱窒菌法の操作は習得しているが、測定に必要な前処理装置を信州大学農学部内に構築するため、生態学研究センター開催された脱窒菌法ワークショップに参加し、同システムの作成方法を学び、現在新規構築中である。これにより、従来より多くのサンプルをより短い出張期間で分析することが可能になる。 以上より、来年度以降の試料分析を速やかにおこなうための環境が整備されつつあり、当研究課題は順調に遂行されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は台風等により標高の高い調査地への入山が制限された時期があり、現地調査が十分におこなえなかった一方で、実験設備の準備を積極的に進めたことで、来年度以降の現地調査により速やかに分析実験を進め、結果が得られるよう準備を整えることが出来た。そのため、年度内に計画を達成できる見込みであり、研究計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現地調査を行い試料採取をすることが不可欠であるため、高標高地帯に頻発する自然災害の発生等に備え、据え置き型の試料採取方法を取り入れる。具体的には、土壌中の無機態窒素の形態や量を調べるための土壌試料の採取について、計画では毎月試料採取をおこなうとしていたが、それと同時に据え置き型のイオン交換膜を設置しておくことで、万が一、試料を採取できない時期が発生してもその間のデータを担保することが可能となる。このように、現地での試料採取と据え置き型のデータ採取法の併用により、災害等によるデータ欠損の事態に備えることとする。
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