2019 Fiscal Year Annual Research Report
微量窒素同位体比分析を用いた山岳地域の温暖化に伴う森林の成長と種多様性の変化予測
Project/Area Number |
19K21157
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小田 あゆみ (小田あゆみ) 信州大学, 学術研究院農学系, 助手 (40571609)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 窒素同位体比 / 硝酸態窒素 / 気候変動 / 山岳地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
温暖化により森林地域でも平均気温が上昇し、山岳地域の森林の成長量が増加することや、落葉落枝などの有機物の分解が促進され、樹木が利用可能な養分量が増加する可能性などが指摘されている。山岳地域は、低標高地域に比べて冷温であり、温暖化により平均気温が上昇した場合に、森林がどのように変化するのかを予測することが難しい。そこで、本研究では、山岳地域において、森林で不足しやすい栄養素である窒素を指標とし、標高の異なる3地点で土壌中の窒素量と、過去50 年分の樹木の成長速度データと統合して解析することで、気温が上昇により起こり得る森林土壌中の窒素動態の変化と、それに伴う樹木の成長の増減を明らかにすることを目的に調査を行った。その結果、今回調査した信州大学農学部西駒演習林における標高2000,2200,2400mに設置したプロットでは、標高が高いほど土壌中の無機態窒素の存在量が多いのに対し、樹木の成長量は小さかった。最終年度には、「微量窒素同位体比分析システム」を用いて樹木の窒素吸収源を硝酸態窒素とアンモニア態窒素の二つに分け、樹木がどの形態の窒素を利用しているかを推定したところ、標高が低いプロットに生育する樹木ほど、分解が進んだ場合に生成される硝酸態窒素を利用している可能性が高いと考えられた。以上より、標高の高い森林では、分解が遅く、樹木の成長量も小さいために土壌中の窒素量は高く、一方で、標高の低い森林では、分解された窒素の多くが樹木の成長に利用されていると考えられた。高標高域では、今後さらに温暖化が進行した場合、潜在的に森林の成長量が増加する可能性がある。
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Research Products
(1 results)