2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H06266
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
横田 陽匡 日本大学, 医学部, 助教 (60431417)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 糖尿病網膜症 / 耐糖能異常 / プロレニン / (プロ)レニン受容体 / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロレニンワクチンを接種することにより産生されたプロレニンに対する抗体は血液を介して全身へ循環する。これまでの我々の検討では、抗体を産生することができる適切な抗原配列の決定、産生された抗体が特異的にプロレニンを阻害することの確認、随時血糖の上昇を緩やかに抑制することを確認した。 プロレニンワクチンの耐糖能異常に対する効果を調べるために、著しい高血糖を発症するdb/dbマウスではなく、比較的緩徐な高血糖を呈する高脂肪食負荷マウスモデルを作成し糖負荷試験とインスリン負荷試験をそれぞれ実施した。糖負荷試験ではプロレニンワクチンを接種したマウスでは、血糖の上昇が緩やかになることが予想されたが、結果としてプロレニンワクチン接種したマウスと非接種群とで血糖上昇に差がなかった。しかしインスリン負荷試験ではプロレニンワクチン接種群で有意にインスリンの反応性が改善した。今後はそのメカニズムを解明する必要があること、随時血糖と糖負荷試験の結果の乖離がなぜ起きたのかを検討する必要がある。 網膜機能の評価として網膜電図を実施した。網膜電図は網膜神経機能を評価するために最も一般的な方法である。糖尿病では神経機能障害が起き、b波の潜時が延長することが知られている。プロレニンワクチンを接種群では、非接種群と比較して潜時の延長が有意に抑制された。また非糖尿病マウスにプロレニンワクチンを接種して、非接種群と比較したが特に有害な事象は認められなかった。 一方で糖尿病では糖尿病網膜症が発症する以前から網膜循環が悪化することが知られている。糖尿病マウスの網膜血流とプロレニンワクチンの効果をレーザースペックル眼血流計を用いて評価した。ヒトとは異なり糖尿病マウスでは網膜循環の悪化は観察されなかったため確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年4月に日本大学へ異動となり、一から旭川医科大学で行っていた研究を立ち上げるための環境整備が必須であった。動物実験施設使用に関する手続きから始まり、場所の確保、暗室の準備など大掛かりな作業が重なったことが進捗が遅れている主な原因である。しかし一方で世界初のマウス用網膜循環測定装置、光干渉断層計を準備することができたため、当初の予定よりもより多くの網膜機能、形態の評価が可能となり、プロレニンワクチンの効果を多様的に評価することが可能になった。知る限りにおいてマウスの神経機能、網膜の形態、網膜循環を同時に観察できる施設はない。 本研究のメインテーマは糖尿病網膜症に対するプロレニンワクチンの効果を評価することであるが、プロレニンワクチンの効果は全身に及ぶことが容易に想像ができることから、糖尿病性腎症の評価を行う予定であった。しかし代謝ケージ(1ケージに1匹のマウス)を必要な数を揃えることが難しいため、今回の計画で糖尿病性腎症に対するプロレニンワクチンの効果を評価することは断念した。 マウスに対するプロレニンワクチンの接種が予定より遅れたことから、摘出した眼球の組織学的検討も遅れている。今後鋭意検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
プロレニンワクチンの臨床応用へ向けての課題は大まかに有効性と安全性の確認をすることである。有効性に関して、プロレニンワクチンの効果がどれくらい持続するかを確認をする必要がある。またヒトへの臨床応用を考えた時に、より大型の動物で糖尿病網膜症を発症するモデルを使用する必要がある。現在、我々は若年発症成人型糖尿病の原因遺伝子を導入した糖尿病ブタで、ヒトの糖尿病網膜症に酷似した網膜病変が観察できることを確認している。また日本大学は旭川医科大学とは異なり、ブタを用いた研究が盛んな施設であるため、ブタの飼育、管理は比較的容易である。また当講座の実験助手はブタの飼育、管理の経験が豊富であり実験の遂行に関しては問題ない。 プロレニンワクチンの安全性に関して、プロレニンワクチンを接種したマウスから脾臓を摘出して、T細胞を用いたELISPLOT assayを行う。これは自己抗原に対するT細胞の活性化を評価する方法で、プロレニンワクチンを接種したマウスのT細胞が、プロレニンにより活性化しないことを確認する。また上述のブタを用いることにより、プロレニンワクチンの副作用に関する検討がより詳細に行えると考える。プロレニンはレニンの前駆体であり、その約50%は腎臓で産生されている。プロレニンワクチン接種により腎障害、その他の臓器への影響をクレアチニン濃度を始めとする各種パラメーター、さらに摘出した臓器を組織的学に評価できると考える。
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