2019 Fiscal Year Research-status Report
ノトバイオート蝿を用いた健康寿命の腸内細菌による延伸効果の解析
Project/Area Number |
19K21594
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
栗原 新 近畿大学, 生物理工学部, 講師 (20630966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
倉石 貴透 金沢大学, 薬学系, 准教授 (90613167)
松本 光晴 協同乳業株式会社研究所, 研究所, 主幹研究員 (50505972)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ポリアミン / ノトバイオートハエ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの腸管内に存在する大量(1kg)かつ多種多様(150菌種以上)な細菌の混合物を「ヒト腸内細菌叢」と呼び、その代謝産物は腸管上皮を通過して体内に取り込まれ、ヒト健康に対して直接的に影響を与える。したがって、腸内細菌叢の有益な代謝産物を増加させることができれば健康寿命の延伸に有効である。ポリアミン(プトレッシン、スペルミジン、スペルミン)は分子内に2つ以上のアミノ基を有する脂肪族炭化水素の総称であり、寿命の延伸、記憶力の増強、心機能の向上などの効果が報告され、その摂取の健康寿命延伸効果はカロリー制限やレスベラトロール摂取と並ぶとされている。腸内細菌叢の重要な代謝産物でもあるポリアミン(腸管内濃度は最大数 mM)は、大腸粘膜から体内に取り込まれることがわかっている。本研究では、ポリアミン合成系遺伝子の破壊・相補を行ったヒト腸内細菌を腸管に定着させたノトバイオート蝿を用いて、腸内細菌が大腸内で生産するポリアミンの健康寿命延伸効果を詳細に解析する。 まず、通常菌叢蝿と無菌蝿の全身のポリアミン濃度を解析したところ、無菌蝿(180 nmol/mg protein)では通常菌叢蝿(220 nmol/mg protein)と比較してスペルミジンが約20%減少していた。次に、通常菌叢蝿用あるいは無菌蝿用の飼料に含まれるポリアミン濃度を解析したところ、無菌蝿用の飼料(550 nmol/mg protein)では、通常菌叢蝿用の飼料(170 nmol/mg)のおよそ3倍のスペルミジンが含まれていた。以上を総合すると、無菌蝿が飼料由来のポリアミンを多く摂取しているにもかかわらず、全身のポリアミンが減少したことから、腸内細菌由来のポリアミンが全身のポリアミンフローに大きな影響を与えていることが考えられた。さらに、通常菌叢蝿の頭部のポリアミン濃度は全身のポリアミン濃度と比較して7倍程度高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
蝿(全身あるいは頭部)のポリアミン濃度の解析系を確立し、飼料と通常菌叢にそれぞれ由来するポリアミンのフローについて推測可能なデータを得たため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
蝿のポリアミン濃度のデータは、全身では30匹、頭部では100匹の蝿の破砕液を用いているものの、試行数は1回であるので、これを増やすことで統計学的処理を可能とする。飼料由来のポリアミンが蝿(全身あるいは頭部)のポリアミン濃度に与える影響を解析する目的で、ポリアミンを含まないスクロース飼料を用いて検討を行う。大腸菌(ポリアミンを産生可能な野生株、ポリアミンを産生できない遺伝子破壊株、ポリアミンを産生可能な遺伝子相補株)を定着させたノトバイオート蝿を作成し、無菌蝿用飼料あるいはスクロース飼料を用いて、蝿(全身あるいは頭部)のポリアミン濃度を解析する。これらの蝿においてポリアミン濃度に違いが観察されれば、腸内細菌に由来するポリアミンが寿命および神経組織に及ぼす影響について詳細な解析を行う。
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