2020 Fiscal Year Research-status Report
「日本的なるもの」はどのように語られてきたか?──分野横断的比較と俯瞰的分析
Project/Area Number |
19K21604
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐倉 統 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (00251752)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五十嵐 太郎 東北大学, 工学研究科, 教授 (40350988)
片山 杜秀 慶應義塾大学, 法学部(日吉), 教授 (80528927)
菅 豊 東京大学, 大学院情報学環・学際情報学府, 教授 (90235846)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 文化史 / 比較 / 科学技術社会論 / 民俗学 / 建築史 / 音楽史 / 美術史 / 文学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、「日本的なるもの」がどのように語られ、扱われてきたかを、さまざまな分野で検討した。今年度は美術、文学、祭礼における日本的概念の歴史と現状を、各分野の専門家から報告してもらい、検討した。方法は昨年度と同じく研究会方式である。昨年度は当プロジェクトの分担研究者が報告者を務めたが、今年度は分野の拡充に伴い、プロジェクト外の専門家にもゲスト講師として発表を依頼した。 「日本的」概念の語られ方や扱われ方については、昨年度検討した民俗学、建築、音楽、科学技術などにおける様相と類似のパターンが今年度の対象領域でも確認された。すなわち、当該領域におけるそれまでの営みが変革を余儀なくされる際に、新たな拠り所として「日本的なるもの」が注目され、なかば恣意的に利用されるというパターンである。それは過去を懐古的に振り返る保守的・愛国主義的な装いをとることが多いが、既存パラダイムの代替枠組みとしての未来志向的・改革的な側面も合わせ持つのが普通であり、このアンビヴァレンスを内在させたまま事態が推移していく状況が分野を越えて共通に見られる。 一方で、その担い手となる層や主体は分野や状況によりさまざである。斯界の権力者が「日本的」概念を前面に押し出す分野もあれば、権力とは無関係にボトムアップ的な力学の原動力として「日本的」概念が拠り所になることもある。分野によって異なることもあれば、同じ分野でも時代や状況にって異なる表われ方をすることは珍しくない。 これらの動向を異なる複数分野で横断的に比較した知見は今までになく、本プロジェクトの独創的な成果であり、次年度も引き続き知見を蓄積すると同時に、最終的な取りまとめも行ないたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の拡大にともない、研究会は遠隔で順調に開催することができたものの、実地でのフィールドワークを行なうことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は成果の取りまとめについての検討をおこない、公開シンポジウムと書籍化の計画を進める。同時に、歴史思想や政治思想などの分野でも「日本的」がどのように語られてきたかを検討する研究会を開催する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため現地調査がおこなえず、主として旅費支出が当初計上額を下回った。
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Research Products
(7 results)