2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K21683
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
福元 健太郎 学習院大学, 法学部, 教授 (50272414)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊田 恭輔 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (70865196)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 激甚災害 / 災害関連死 / 被災者生活再建支援 / 認定 |
Outline of Annual Research Achievements |
激甚災害については、それをさらに拡張して、その母法である復旧基本3法を中心とした、災害復旧事業費に焦点を当てることとした。その方がより適用範囲の広い議論ができ、また操作変数として降水量を使う際に除外制約を満たしやすいと考えられるからである。但し背後にある理論は変えていない。すなわち、前回選挙で与党の得票率が多かった市町村ほど、災害復旧事業費が多くなるのではないかと考えられる。また多くの災害復旧事業費を受けた市町村ほど、次の選挙で与党の得票率が高くなることが考えられる。以上のような分析をするためには、災害復旧事業費、与党得票率、降水量、十数個の制御変数を、市町村別及び選挙区別に整備する必要がある。1989年から2017年までのデータ整備をようやく終えた段階である。 災害関連死については、熊本地震の場合について次のような分析を行い、論文を公刊した。熊本地震の特徴のとして、災害関連死に認定された人数の多さと、発災から認定されるまでの期間の長さ(認定される時点の遅さ)が挙げられる。本研究は、熊本地震における災害関連死認定の市町村による違いがあるかを明らかにするために、関連死が認定されるタイミングに着目し、生存分析の枠組みを適用した。その結果、熊本市は他の市町村と比べて統計的に有意に早く関連死を認定していることがわかった。また益城町は遅めであった。さらに証拠はやや劣るが、大津町は早め、宇城市は遅めといった傾向も見られた。分析上の細かな設定を多少変えてみても、以上の結論は大筋変わらず、頑健である。ここから、データ分析が難しい関連死認定の他の側面(例えば、人数の多寡、認定基準、審査委員の傾向など)についても、市町村による違いがあったのではないだろうか、ということが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
災害関連死についての研究は、論文を公刊した。災害復旧事業費についての研究は、データ整備が終わった段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
災害復旧事業費については、データ整備が終わったので、これからデータを次の2つの方法で分析することを考えている。1つは、回帰不連続デザインである。選挙で与党が僅差で勝った選挙区と負けた選挙区とで、災害復旧事業費がどれほど異なるかを調べる。これによって、選挙で勝つことでどれほど災害復旧事業費が増えるか、という因果推論ができる。もう1つは操作変数法である。省略変数バイアスに対処するため、本研究は選挙前年の降水量の最大値を操作変数として利用する。この変数は、豪雨などによる災害復旧事業費には影響するが、選挙に直接は影響しないはずなので、これを利用すれば省略変数バイアスはなくなる。そこで2段階推定法により、災害復旧事業費が増えることで与党得票率がどれほど増えるか、という因果推論ができる。分析を終えたら、論文を執筆し、海外の一流学術誌に投稿する予定である。 住家の被害認定については、次のような研究を推進する。被災者生活再建支援金が支給されるのは、支給対象災害により住宅が全壊・半壊するなどした世帯である。そもそも、ある災害が支給対象となるためにも、その市町村で一定数の住家が滅失することが要件となっている。住宅の全壊・半壊の認定にあたっては、「災害の被害認定基準について」という通知があるが、実際には市町村の判断であり、被災者の苦情も多いところである。本研究は、回帰不連続デザインを用いる。滅失した住家がぎりぎり基準に達したので支給対象となった市町村(処置群)と、ぎりぎり達しなかったので支給対象とならなかった市町村(制御群)とを比べる。もし公平であれば、両群の間で諸変数の平均値はほぼ同じはずである。しかしもし逆に認定が公平でなければ、平均値は同じにならず、かつ処置群の方が制御群よりも市町村の数が多くなるだろう。
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Causes of Carryover |
パソコンが更新時期かと思っていたが、まだ使える状況だったこと、適切な研究補助者を得ることができなかったこと、オンライン資料が多かったこと、による。次年度は、パソコンの状況を見ながら更新を検討するとともに、適切な研究補助者を見つけたい。また学会報告もいくつか採択されていたが、新型コロナ・ウィルス感染症のために中止ないし延期になったものが多く、代替的機会を検討する。海外の一流学術誌に投稿する予定なので、英文校閲も依頼するつもりである。
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Research Products
(3 results)