2021 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるワインの大衆品化メカニズム ~文化製品の国際展開に関する事例研究~
Project/Area Number |
19K21700
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
岸本 太一 東京理科大学, 経営学研究科技術経営専攻, 講師 (70508556)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸 保行 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (50454088)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 文化製品 / 国際展開 / 大衆品化 / ワイン / 日本酒 / 製品適応 / ブーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「日本市場におけるワインの大衆品化」を事例研究の主な題材として活用し、「文化製品の国際普及メカニズムの全体像」を大まかに描写することを、最終目的としている。そして、その結果を、短編論文に留まらずに、著書化することを目指しており、この点を上述の目的と共に、挑戦的研究としての意義の一つに掲げている。以上を踏まえ、本年度も昨年度に引き続き、その中間作業という位置づけで、全体像の構成要素となる鍵現象の抽出を試みた。 研究計画調書では、本年度が最終年度となる予定であった。しかし、COVID-19の流行の影響で研究がやや遅れているため、延長を申請し、本年度も中間作業という位置づけで研究を実施した。本年度においては、具体的には「製品適応」と「ブーム」という二つの鍵現象を抽出し、その現象が普及に影響を与える論理を導出した。 「製品適応」とは、文化製品を現地の慣習に適応させる試みを指す。昨年度から研究対象に追加した日本酒の事例とワインの事例では、製品適応を実施する企業の国籍が異なっていた。そして、その違いが産業の伝統的慣習や蓄積に対して、異なる影響を与えていた。本年度はこの現象を考察し、その分析結果の一部を「2021年度 組織学会 研究発表大会」で発表した。 他方「ブーム」とは、ある物が一時的に熱狂的な人気の対象になる現象を指す。ワインの日本展開では、このブームの活用が、市場を拡大する上で、重要な役割を果たしていた。本年度は、この現象を分析し、その結果を「日本経営学会 第95回大会」で発表した。 以上の他に未公表の実績も存在する。本年度は、国内ジャーナルへ論文を1本投稿した。調査の面では、ワイン関係者に対するインタビュー調査も1回実施した。加えて、著書の章立て案に関しても、昨年度構築したものを改訂し、精緻化した。これらの成果は、著書の一部に活用される形で、将来的に最終目的に貢献する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」を選択した最大の理由は、フィールドワークの予期せぬ中止にある。 今年度も、フランスを中心とした海外調査を予定していた。同調査は、一昨年度の3月に実施する予定であったが、急遽延期となってしまったために、昨年度にスライドし、更に昨年度も延期になったため、今年度にスライドした調査となる。しかし、今年度も、COVID-19の流行の影響で、実施することができず、再び延期となった。(なお、同調査の詳細については、一昨年度の実施報告書に記載してあるので、そちらを参照して頂きたい。) 加えて、国内における訪問調査の方も、計画していた調査の大半が、中止もしくは延期となってしまった。一例を挙げておくと、2022年3月に新潟県の酒蔵や日本酒専門の小売店、卸売店、酒造組合、醸造試験場等を、3日から4日をかけて訪問調査する計画を立てていた。しかし、まん延防止等重点措置が発令された影響もあり、調査を打診していた企業や機関側から、受け入れの拒否もしくはキャンセルが相次ぎ、実施することができなくなった。 本研究課題は、フィールドワークを最大の事実収集源に位置づけて、研究計画を立てた課題となる。それゆえに、訪問調査を実施できなかったことは、成果報告の面にも、その進捗に少なからず影響を及ぼすこととなった。具体的には、当初の計画では、本年度には「①:海外ジャーナル向けの論文コンテンツの作成」および「②:最終成果物となる著書の作成」を行う予定であったが、②に関しては、達成することができなかった。 ただし、成果公表計画の全てを達成できなかったわけではない。①の方は、既に実施したフィールドワークの結果を基に、題材となるコンテンツの作成を進めることができている。また、②についても「研究実績の概要」の欄で記載したように、著書の一部となる成果は着実に増えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針については、事実調査面と成果公表面に分けて記述する。 事実調査面に関しては、下記の2点の試みを考えている。 1点目は「延期したフィールドワークを本年度の調査に追加する」という試みである。「現在までの進捗状況」の欄で記載したように、本研究には、本年度までに実施を予定していたが延期となった訪問調査が、複数存在する。したがって、次年度においては、延期となっている調査を、可能な限り実施することを試みる。 2点目は「フィールドワーク以外の調査方法に切り替える」という試みである。こちらは、本年度から既に採り入れているが、フィールドワークに関しては、次年度もCOVID-19の影響により実施できない可能性があるため、引き続き検討していく予定である。代替手段としては、現時点においては、オンラインによるインタビュー調査と文献調査を考えている。 成果公表面に関しては、「今年度提出予定であったが未提出の成果物」を、できうる限り公表していきたいと考えている。具体的には、「最終成果物となる著書の出版」および「海外ジャーナルへの論文の投稿」を達成したいと考えている。 しかし、上述したように、本課題においては、事実調査の面で大幅な遅れが生じており、次年度の調査にも、実現できないリスクを抱える訪問調査が含まれている。したがって、仮に事実収集が不十分になってしまった場合は、例えば、公表媒体を海外ジャーナルから学会発表や報告書に変える等の変更を、余儀なくされる可能性はある。また、補助事業期間の延長に関しても、再延長が制度的に認められる場合は、事実収集の状況や海外渡航の見通し等を考慮し、選択肢の一つとして検討していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、フィールドワークの予期せぬ中止および研究会のオンライン化にある。「現在までの進捗状況」の項で述べた通り、本年度に実施する予定であった訪問調査は、COVID-19の影響で、その全てを延期せざるを得ない状況となった。結果、各調査で使用する予定であった旅費、通訳等の依頼にかかる人件費、ヒヤリングデータのテープ起こし外注費などの出費が、全て無くなった。加えて、昨年度からは、開催予定であった研究会を全てオンライン化した。その結果、研究会に関連した旅費の出費も全て無くなった。 次年度使用額の用途候補としては、主に次の三つを考えている。一つ目は「上述した訪問調査を実施した際の費用」である。今年度実施できなかった訪問調査の多くは、中止ではなく延期となっている。したがって、COVID-19の流行が沈静化した場合には、類似の調査を実施する可能性がある。二つ目は「オンラインインタビュー実施のための費用」である。こちらの方法に関しては、訪問調査が困難な場合の次善策として検討しているが、オンラインで実施する場合にも、通訳の手配や機器の整備等が必要となる。三つ目は「新たに加えた調査の費用」である。一昨年度の「今後の研究推進方針」の項目で述べた通り、昨年度から「日本酒業界の調査」等を、当初の計画に追加しており、次年度も行う予定である。以上の三つの実施費用が用途候補となる。
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Remarks |
「岸本太一 経営研究所」は、研究代表者が個人で開設したwebページとなる。
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Research Products
(6 results)