2019 Fiscal Year Research-status Report
経済実験における研究知見の再現性と頑健性に関する検討
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19K21701
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
犬飼 佳吾 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (80706945)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 友哉 明治学院大学, 経済学部, 准教授 (70706928)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 行動経済学 / 実験経済学 / 再現性 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、心理学研究の追試実験から、研究論文として報告されてきた知見や現象の再現率が想定よりも低いこという知見が報告され、研究者コミュニティーならず一般社会においても大きなインパクトを与えている。特に、人を対象に行う実験における研究知見の再現性が低いという研究がScience 誌に報告され、大きな衝撃を与えた(Open Science Collaboration, 2015)。この論文では、心理学の主要研究の再現率は36%程度出会ったことが報告されている。周辺領域におけるこうした流れを受けて、ある実験経済学、行動経済学のグループはAmerican Economic Review、Quarterly Journal of Economics 等の経済学分野における主要誌に掲載された経済実験研究の追試を行い、実験経済学分野における再現率は61%程度であったことが報告している(Camerer et al., 2016)。実験経済学研究の再現率は、心理学分野に比べて高かったものの、主要誌に掲載されている知見の4割程度は再現できなかったという点は見逃すことが出来ない。 こうした背景を受けて、本研究では行動経済学、実験経済学分野における主要知見について、大学生を対象とする追試に加えて、一般人市民を対象にも同様の追試を行う。さらに、実験報酬単位の多寡、実験プラットフォームの違い(経済実験室での実験か、ウェブ上で実装された実験か)という観点からの検証も同時に行い、行動経済学・実験経済学分野の研究知見の頑健性の検証を通じて、行動経済学・実験経済学分野における基礎的手法の精査検討を行うことを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、大学生サンプルを対象とした行動経済学、実験経済学分野の主要研究知見の再現実験を実施した。再現実験として取り上げる研究として、当該分野における引用回数をWeb of Scienceから指標化し、インパクトの高い研究の中から、リスク選好や時間選好などの測定を対象とする個人の意思決定関する研究、ゲーム理論やマーケットについての研究な喉の被験者間のインタラクションのあるタイプの実験それぞれ、上述の客観的指針にもとづいて選択した。初年度は、これらの基準に基づいて選択された実験を主に日本人大学生を対象に実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、近年利用が拡大しているクラウドソーシングサービスを通じたWeb実験も併せて実施する。Web実験は、学生サンプル以外の人々を対象に大規模なデータ収集をすることが可能である一方で、自宅のPC上で行う実験のため実験協力者の行動の自由度が高くデータの質にばらつきが出やすいことも考えられる。本研究では、近年実験研究においても利用が拡大しているこうしたWeb実験においても、経済実験の主要知見が再現されるのかどうかを検証する実験を進める。加えて、一般人参加者を対象とする実験室実験を実施するための基盤構築を行う。
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Causes of Carryover |
2019年度末にコロナウィルスによる実験計画の一部中断等により、研究計画の一部修正が生じた。これを受けて、2020年度は初年度の計画を引き続き実施する予定である。
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Research Products
(8 results)