2020 Fiscal Year Research-status Report
地球科学における研究評価の国際チューニング:知の文化と指標の創造
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19K21735
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山中 康裕 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (40242177)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 知の創造 / 研究評価 / Institutional Research / 論文崇拝主義 / チューニング / IR / 地球惑星科学 / インパクトファクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画では、(A)研究活動の把握(Institutional Research, IR)として、日本地球惑星科学連合(Japan Geoscience Union, JpGU、会員約1万人)を対象として、研究者個人や研究者コミュニティーが抱く「知の創造」に対する認識と研究活動の実態を明らかにすること、(B)米国地球物理学連合(American Geophysical Union, AGU)や欧州地球科学連合(European Geophysical Union, EGU)を通じて、海外研究者コミュニティーやステイクホルダーの「知の創造」に対する認識と研究活動の実態を明らかにすること、(C)それらに基づいたセッションをJpGUで開催し、社会との対話と研究者コミュニティーでの議論を始めることを通じて、研究者コミュニティーが、自ら研究活動を評価し、それに基づく社会への説明責任を果たす文化の創造を目指した。 2020年度、本研究の趣旨に基づくユニオンセッション「知の創造の価値とは何か」を、JpGU会長やAGU会長等も講演する形で、7月にJpGU-AGUの合同大会に、12月にAGU大会で実施した。併せて、JpGU会員やAGU会員に、「知の創造の価値とは何か」に関するアンケートを実施した。併せて約1,200件の回答を得た。JpGUとAGUとの相違や、世代間の相違を含めて、コミュニティーとしての認識の全体像が明らかになった。特に、地球科学に関するJpGU、AGU、EGUを含む国際学会が共同宣言した「社会への還元」については、JpGUよりもAGUが、特に若手研究者で意識が高いといった差が見られた。この結果の概略を日本地球惑星科学連合ニュースレター誌(JGL)の2021年2月に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書で挙げた体制、山中康裕(研究代表者)、末廣潔(研究協力者)、島村道代(研究協力者)による、一介の研究者の知的好奇心から始まった。本計画を通じて、科学者コミュニティーが科学的データ(エビデンス)を得ながら自ら議論していかねばならないという本研究の趣旨に対して、JpGUやAGUの会長や副会長等の賛同を得て、分野を横断するテーマとしてユニオンセッションが採択され、そのもとでJpGU会員やAGU会員にアンケートを実施、併せて約1,200件の回答を得た。学会トップの積極的協力のもと、世界的に均質なアンケートを実施できたことは、計画以上の成果である。 学術的知見としても、相互を比較することにより、国内コミュニティーの認識の特長も明らかになった(例えば、AGU会員は世代に関係なく速報性を重視するが、JpGU会員の年長者は完璧性、若手は速報性を重視している)。このような知見をフィードバックするために、JpGU会員に配布されるJGLに公表することも行われた(JGLは、誰でも投稿できるものではなく、編集委員会の判断によって認められた者となっている)。そのことにより、研究者コミュニティーが、科学的データにもとづいて議論する、枠組みの構築を行うことが出来た。これは、まさに、挑戦的研究(萌芽)の成果としてふさわしいものとなったと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
既に、6月のJpGUでユニオンセッションを実施することが決まっており、また、12月のAGUでもセッションを提案しており、採択されれば実施する予定である。ここまでで差異が明らかになった「社会への還元」については、それぞれの回答者が考えるものがどういうものなのかについては、必ずしも明らかになっていない。会員それぞれが思う「社会への還元」の詳細を明らかにするために、次のアンケートを実施することにしている。また、これまでの成果を、国際会議International Conference on Data Science and Institutional Research(2019年7月オンライン)において、報告する予定である。いずれにせよ、枠組みは出来たものの、水平展開としての多くの研究者が議論する形に整えていくことを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症のため、研究者への聞き取りが一部出来ず、次年度に行うこととしたため(研究期間延長承認済み)。
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Remarks |
アンケートを実施した際に、趣旨説明等を行ったもの
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