2019 Fiscal Year Research-status Report
Detection of solvated electrons and challenge to their kinetics in liquids interacting with plasmas
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19K21861
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐々木 浩一 北海道大学, 工学研究院, 教授 (50235248)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 溶媒和電子 / CTTS遷移 / 光励起脱溶媒和 / プラズマ・液体相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度には,研究計画調書に記載した当初計画のとおり,順調に研究が進展した。 まず,イオン液体中の溶媒和電子の反応性を調べる実験では,CTTS遷移により発生した溶媒和電子の反応周波数をイオン液体と相互作用する低ガス圧誘導結合プラズマの電子密度の関数として整理し,反応周波数が電子密度に対して直線的に増加することを示した。また,プラズマ停止後においては溶媒和電子の反応周波数が時間的に低下することから,溶媒和電子と反応する化学種は安定分子では無く,有限の寿命を持つ反応生成物であることを示した。溶媒和電子と反応する化学種は波長230nmにおいて光吸収を持つことを示したが,化学種の名称を特定するには至らなかった。 次に,大気圧プラズマと相互作用する水中における水和電子の反応性を調べる実験では,水和電子の反応周波数が水面近傍において大きくなることを示した。放射線化学の分野における文献の調査から,水和電子と反応する化学種は過酸化水素であると推定し,過酸化水素がプラズマ・液相界面において局所的に高い密度を有する可能性を示した。 また,令和2年度における実験の準備として,大気圧プラズマと相互作用する水界面近傍層に存在する水和電子を光照射によって脱水和し,脱水和によって発生する自由電子を気相に輸送して検出する実験のための装置を構築した。波長266nmのNd:YAGレーザーパルスを水側からプラズマ・液相界面に入射して全反射させると,水が陰極として動作する大気圧直流放電においては,レーザーパルスに同期して放電電流がパルス的に増加することを観測した。これは,脱水和によって生じた自由電子がプラズマに輸送されたことによる放電電流変化である可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上に述べたように,令和元年度においては,研究計画調書に記載したCTTS遷移を用いた溶媒和電子の反応周波数に関する研究は完了し,低ガス圧誘導結合プラズマと相互作用するイオン液体における溶媒和電子の反応周波数に関しては論文を完成し,大気圧プラズマと相互作用する水中における水和電子の反応周波数に関しては論文を作成中である。さらに,研究計画調書においては令和2年度に計画していた光励起脱溶媒和の実験についても先行して実験装置を構築し,初期的な結果を得ていることから,当初の計画以上に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度においては,プラズマ・液相界面近傍領域における水和電子を光励起脱溶媒和を用いて検出する実験に全力を挙げる。これは,極めて萌芽的・挑戦的な実験であるが,令和元年度において既に初期的な結果が得られており,予定どおりの成果が得られればプラズマ・液体相互作用研究における極めて重要な成果となる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が比較的大きい理由の一つは,2020年3月の応用物理学会が新型コロナウイルスの影響で中止となり,予定していた旅費を支出しなかったためである。また,光励起脱溶媒和の実験において現有のパルス発振Nd:YAGレーザーを使用したところ信号が得られたことから,研究計画調書において購入を予定していたHe-Cdレーザーを購入しなかった。実験の進捗から令和2年度において必要と判断すれば令和2年度の助成金と合わせた予算を用いて購入する。
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Research Products
(4 results)